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お金が集まるプロジェクトにはどんな共通点がある?中の人に聞く(2/3 ページ)

» 2018年02月27日 11時00分 公開
[鈴木亮平ITmedia]

クラウドファンディングを成功させるためには?

――クラウドファンディングに向いている、または資金調達に成功しているプロジェクトの共通点について教えてください。

中山: 先ほども申し上げたように、クラウドファンディングの出資者は投資よりも消費に近い感覚で出資をします。ですから基本的には、B2C領域で一般消費者が楽しめる(購入できる)プロジェクトとの相性が良いですね。

 また、出資側は企業ではなく個人が大半ですので、B2B領域のプロジェクトの場合は相性があまり良くありません。個人として活用するイメージが湧くもの、消費者の興味関心に合う、欲しい商品(リターン)手に入れることができるものが資金調達に成功しています。

 また、提供できるプロダクトがなくても、消費者にとって関心の高いプロジェクトには資金が集まりやすいです。

 例えば、京都の「祇園祭」の運営資金を募ったプロジェクト。リターンは「お礼状」「記念品」などでしたが、目標額300万円に対して、1379万3000円の資金調達に成功しました。祇園祭を応援したい、伝統を守り続けて欲しい、そして祇園祭に行きたいという人たちササり、多くの資金が集まりました。

 つまり、共通しているのは法人に対する需要よりも一般消費者として需要があるものに、お金が集まりやすいということですね。

photo 「祇園祭」の運営資金を募ったプロジェクト。成功のポイントは法人の需要よりも、消費者個人として需要があるもの

――さまざまなプロジェクトを見ていると、似たような内容のプロジェクトもたくさんあります。その中で、支援金が集まるものと、集まらないものとでは、何が違うのでしょうか。なぜ差が生まれてしまうのでしょうか。

中山: 当たり前の話ですが、それぞれの新商品やアイデアには「特徴」があります。その特徴をターゲット層にしっかりと伝えられているかが重要なポイントです。

 そして、その商品を使用した際の体験をイメージさせることができているかどうかで、集められる金額が大きく変わっていきます。

 例えば、良い例として、おしゃれな氷を自宅で作れる「ポーラーアイストレイ」のプロジェクトが挙げられます。他社製品と比べて、氷の仕上がりにどのくらいの違いが出ているのかを伝え、氷の利用シーンについても具体的に数パターン提示しています。

photo 目標金額に対して6000%超えの資金調達に成功した「ポーラーアイストレイ」
photo 家で飲むお酒と、バーで飲むお酒は何が違うのか。その答えは「氷」にあると説明し、その違いを写真で分かりやすく説明している

 プロジェクトの説明ページでは「家で作る氷は不純物を多く含むので白く曇っています。この氷は溶けやすいのでお酒の味も台無しにするのです。しかし、特殊な構造(世界各国で特許取得)のポーラーアイストレイを使えば透明でリッチな丸氷を作れるのです」と一般的な氷との違いを説明し、利用シーンについては晩酌の他にも「プレゼント」「装飾アイテム」にも使えることを写真で分かりやすく訴求しています。

 これまでの晩酌がどう変化することになるのか、“ビフォーアフターで分かりやすく”説明し、「体験をイメージさせる」ことができたことが成功につながっています。

photo 晩酌がどう変わるのか、イメージさせる
photo プレゼントや装飾アイテムなど、複数の利用シーンを提案

 また、このプロジェクトページでは、商品を購入する際、妻にどう言えば無駄使いと思われないのか、そのセリフまで提示しています。「買ってみたい」と思ってもらうための仕掛けも上手です。

 目標額は30万円でしたが、最終的にはなんと1877万円の調達に成功しました。

「ペーパーナイフ」に1600万円集まる

 他には、ペーパーナイフの開発プロジェクトも良い例です。

 刃物加工が得意な中小企業が日本刀の形をした「ペーパーナイフ」の開発にチャレンジしました。

 同じ形をしたペーパーナイフは他にもありましたが、伝統的な技術力を最大の特徴として打ち出したことで、歴史好き、伝統好きにササりました。

 同社の拠点は戦国時代から「刃物」で有名な岐阜県の関市にあります。伝統産業として培ってきた技術をウリにしたことで、他のペーパーナイフと大きく差別化を図りました。ペーパーナイフに興味がなかった層でも、伝統技術という点から興味を抱かせて「ワクワク」させることができた事例です。

 目標金額は100万円でしたが、1617万4200円の調達に成功しています。

photo 伝統的な技術力を最大の特徴として打ち出したことで、歴史好き、伝統好きにササり、多額の資金調達に成功した

 このように、調達側がプロジェクトの一番の「特徴」をきちんと明確にし、それを最大限に訴求できているかが重要なのです。うまくいっていない例を見ていると、まず調達側がそれを理解していないケースも多い。そうすると、相手に体験をイメージさせることも当然難しくなります。まずは、何がウリで、何を一番に伝えたいのかはっきりさせなければいけません。

 もちろん、「見せ方」「切り口」については、キュレーターと呼ばれるスタッフがサポートしています。ターゲットの設定だったり、それを踏まえてどういう利用シーンを提示するべきか、募集者と一緒に切り口を考えています。

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