あいさつ運動のような取り組みを実施するためには、当然、話し合いや準備が必要となる。社内で理解が進んでいなかったころは、準備を進めることにも苦労した。
プラスは今でこそ、職場の雰囲気づくりや多様な働き方に最適な空間をつくる、という視点を踏まえて営業活動をしているが、ワクワクプロジェクトが立ち上がった当初はまだそうではなかった。オフィス家具という「モノ売り」には長けていたが、「コト売り」の発想は乏しかったのだ。
そのため、ワクワクプロジェクトが自分たちの仕事につながると考えている社員は多くはなかった。会社が業務の一環として認めている正式なプロジェクトであるにもかかわらず、風当たりは厳しかった。
「『仕事に関係ないのに、時間を割くのか』という声がありました。業務の一環ではありますが、本業ではない。コソコソとやっているような感じでした」(渡辺さん)。部署の仕事をした上でプロジェクトの活動をしているのに、プロジェクト関連の仕事をしているときは、PCの画面が周囲に見えていないか気にしてしまう。そんな日々が続いた。
そんな状況が少しずつ変わるきっかけになった取り組みの1つが「写真展」だ。社員からプライベートの写真を募り、コミュニケーションスペースに掲示する。家族や趣味の写真を共有することで、お互いの知らなかった一面を知ることが狙い。夏と冬に実施する、恒例企画になった。
「休み」をキーワードにしたテーマを毎回設定し、写真を募る。最初に告知したときは反応が薄かった。しかし、探してみると見せたい写真が出てくる社員も多く、1人で何枚も持ってくる人もいた。子どもや孫を自慢する写真があれば、若かった30年前の写真もある。多彩な写真は見ているだけで面白い。そんな写真を貼り出すと、その場所には笑い合う声が聞こえるようになった。
渡辺さんが特に印象に残った写真は、普段は寡黙なデザイナー職の男性社員の1枚だ。「旅行先にあったクマの銅像の前で撮影された写真です。クマと同じポーズでお子さんと写っている姿が『意外な一面』と話題になりました」。写真コンテストを実施したときに賞を取った1枚も印象的だ。製品開発の課長が撮影した「自社製品(保管庫)を駅のホームで見つけた」という写真。製品に対する愛情が表れていた。
「写真展を続けるうちに、『参加したい』という人が増えていきました。そして、(プロジェクトに対する)冷たい声は減っていきました」(渡辺さん)
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PRアクセスランキング