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» 2018年03月01日 11時00分 公開

超・営業力:「安ければ売れる」で痛い目を見たキノコ営業マンを変えた一言 (1/3)

キノコは冬場に飛ぶように売れるが、夏場は苦戦する。キノコメーカーであるホクトの東北エリアで営業リーダーを務める日柳さんは以前、夏場に何の理由もなく安売りをしたことで大失敗したという。

[伏見学,ITmedia]

「超・営業力」特集:

 「営業の成績がなかなか伸びないなあ」「自社の商品が売れないよ」といった悩みを抱えている人も多いのでは。ビジネス書を読んだり、セミナーに出席したり、なんとかいまの立場から抜け出そうと試みるものの、うまくいかない。

 では「一流」と呼ばれている営業担当者は“ひよっこ”のとき、どういったところに着目し、どのようにして成長してきたのか。本特集はそのきっかけに迫り、二流から一流になるためのヒントを探る。


 「お、それいいですね!」

 「はいはい、何でもやりますよ!」

 あなたの周りにこんな調子の営業マンはいないだろうか。ノリは良いし、こちらの相談にも常にポジティブ。ただ、詰めが甘くて肝心なところで大失態を犯し、挙句の果てには連絡が取れなくなる。とてもこんな営業マンは信頼できないだろう。

 「社交辞令を言わない」ことをポリシーにしているのが、キノコ類を製造、販売するホクトの宮城営業課で課長を務める日柳(くさなぎ)敦生さんだ。

ホクトの商品。長らくブナシメジだけだったが、15年ほど前から商品ラインアップを増やしている ホクトの商品。長らくブナシメジだけだったが、15年ほど前から商品ラインアップを増やしている

 「営業は人を相手に商売する仕事。特にわれわれのような生鮮食品を扱う会社の営業マンは、スーパーや量販店の同じバイヤー、青果市場の同じ担当者と毎日商談するわけです。調子の良いことを言って、もしできなければ、次から仕事が来なくなるでしょう」

 安請け合いをせず、できないことはできないと言う。もちろん、はなから断るのではなく、ギリギリのところまで調整した上での回答だ。そうした振る舞いが両者の信頼関係につながるのだと日柳さんは考える。

 「それでも当然、取引先から無理を言われることはありますし、逆にこちらも無理なお願いをすることはあります。そうしたときにこそ、しっかりとした関係性ができていないと絶対にうまくいきません」と日柳さんは力を込める。

 そんな日柳さんは営業マンとしてどのような道を歩んできたのだろうか。

4種類のキノコセットが大人気に

 1999年、異業種からホクトに中途入社した日柳さんは、香川の営業所に配属され、そこで約2年間、キノコ業界の仕事の基礎を身に付けた。当時、香川は関西地区も管轄エリアだったので、明石大橋を渡ってよく兵庫、大阪エリアも営業して回ったそうだ。その後、北海道に2年、東京で7年勤務し、8年前に宮城にやって来た。

 ホクトは全国に営業拠点と生産拠点がある。商品はブナシメジ、エリンギ、マイタケ、ブナピー、霜降りヒラタケで、9割以上がスーパーや量販店に向けたB2Cのビジネスである。基本的には地産地消をうたい、消費地にできるだけ近い場所に製造工場を持つようにしている。宮城きのこセンターでは現在ブナシメジだけを毎日10万パック生産している。

宮城きのこセンター 宮城きのこセンター

 日柳さんを含め宮城営業課には8人の営業部員がいるが、日柳さんもプレイングマネジャーとして、スーパーや市場といった営業現場にほぼ毎日足を運んでいる。

 キャリアを振り返り、日柳さんにとって一番の成果は何かと聞くと、「生協向けのセット企画」の商品開発だという。

 きっかけは東京営業課で生協の宅配事業を担当したときである。ちょうどそのころ、「健康」をキーワードに掲げてキノコを顧客に訴求し始めていた。そこで消費者がキノコを食べる頻度をもっと上げるにはどうすればいいかと考えた日柳さんは、キノコをスーパーで1個1個買うのではなく、1度にまとめて買えるようにすればいいという答えに行き着く。ホクトの商品は日持ちすることも強みだったので、生協の共同購入メニューとしてブナシメジ、エリンギ、マイタケ、ブナピーの4種類100グラムずつを袋詰めした。この企画が消費者に幅広く受け入れられて、たちまち人気商品になった。

 「スーパーの顧客だと必要な分だけ買って帰りますが、共同購入の顧客は店に行く時間がないから宅配を頼むケースが多いでしょう。セットで買っておけば1週間の献立の中でキノコがいろいろ使えて便利だというニーズもあったのです」

 日柳さんには別の狙いもあった。ブナシメジに関しては同社が日本一の生産量を誇るが、マイタケは競合メーカーにシェアを奪われていて、なかなかスーパーなどでホクトのマイタケを買ってもらう機会がなかった。また、ブナピーは当時発売したばかりで認知度が低かった。それらをセット売りにし、オリジナルレシピを同封しておいしい食べ方の提案をすることで、商品全体の底上げにつながるはずだと思った。

 このセット商品は宮城営業課に異動になってからも大きな武器になった。当時の宮城営業課にはこうした企画がなかったので、すぐさま東北の生協に営業提案し、採用に。実はそれ以降この企画はずっと続いており、今では定番として共同購入の冊子に必ず掲載されるヒット商品にまで成長した。このように企画が継続されることは珍しいようだ。8年前にはほぼ実績がゼロだったのが、東北6県で約1億5000万円の売り上げになるなど、新たな販路開拓に貢献した。

 もちろん売れなければ企画は継続できない。例えば、山形で芋煮の季節には、エリンギを外してブナシメジを2個入れたり、バーベキューシーズンにはマイタケの代わりにエリンギを2個入れたりと、消費者のニーズに応じて商品をアレンジし、飽きさせないような工夫をしている。

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