ランドセル商戦の早期化 震災が後押し入学1年前から情報収集が当たり前(2/3 ページ)

» 2018年03月05日 16時03分 公開
[昆清徳ITmedia]

強まる早期化の傾向

 ランドセル商戦のもう1つの傾向が早期化だ。イオンリテールは昨年より10日早く予約販売を開始している。同社によると親がランドセルの購入を検討し始めるのは春〜夏がピークだ。カタログやサイトも参考にするがランドセル売り場に直接足を運んで情報を集めるのが主流。検討から購入するまでの平均来店回数は3.99回となっている。受注生産の場合、注文してから受け取るまで約4カ月かかるケースが多いので夏に購入を決めるのは決して遅くはない。

 イオンリテール開発グループランドセル担当の山下嘉則氏は「もともとランドセルは年末年始に買うのが一般的でした。ネットによる情報収集が普及したため、より早く情報を提供するほうが売れるようになりました。有名なかばんメーカーも早期に受注するほうが安定した生産体制が組めるので情報を早く出すようになりました」と解説する。人気のブランドを確保したい親とメーカーの思惑が一致し、スケジュールが前倒しになった面があるようだ。

photo ランドセルを開ける子どもたち

 早期化のもう1つの理由はランドセル購入が祖父母を巻き込んだ1大イベントとなったことだ。「天使のはね」シリーズで有名な最大手のセイバン(兵庫県たつの市)の調査によると約7割の家庭で祖父母がランドセルを購入している。ランドセル平均購入金額は約5万円。同社広報は「平均単価は年々上昇している。孫に好きなものを選ばせてあげたいという気持ちがあるようだ」と分析する。前述したイオンリテールの山下氏は「東日本大震災があってから家族の絆が改めて注目されるようになりました。お盆で孫が帰省したときに一緒にランドセルを選び、お正月までに届いたランドセルをプレゼントするというスケジュールがフィットしたのではないでしょうか」と語る。

 少子化の進展で子どもにより多くの金額的・時間的コストをかけられるようになった。親や祖父母が早期に情報収集を始め、子どもの要望を聞きながら最終的に購入するものを決める。こだわりのランドセルは受注生産が多いのでどうしてもスケジュールが前倒しになる。早期化の背景にはこういった社会的変化があるようだ。

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