首脳会談決定で高まる、米朝開戦のリスク世界を読み解くニュース・サロン(3/4 ページ)

» 2018年03月15日 07時30分 公開
[山田敏弘ITmedia]

会談しても「非核化」は実現しない

 2つ目に、会談が行われても、米国が最低限求めている「非核化」はありえないということだ。なぜなら、一言で言うと、北朝鮮が体制維持のための唯一の切り札である核開発を止めることはないからだ。もっと言うと、米国は、実は北朝鮮はすでに最大で60発の「核兵器」を所有していると見ているが、その核兵器を手放すのは考えにくい。

 また韓国の特使団が金正恩委員長から伝えられたとする「非核化の意思」だが、その意味はよく分からない。どうすれば、その意思を実行に移すのかが示されない限り、まったく意味を成さない言葉だ。金委員長が「2020年の東京五輪に選手として出場する意思がある」というのと基本的に同じくらい適当な発言である。

 さらに、北朝鮮が非核化に向け、国際原子力機関(IAEA)の査察を受け入れるという道があると指摘する声もある。だが現実にIAEAの査察団が北朝鮮に入って、核兵器を発見したらどうなるのか。北朝鮮は世界から核保有国と認められ、無視できない国として認識してもらいたいはずだが、米国は北朝鮮を核保有国とは絶対に認めたくない。しかしIAEAの査察で核保有が明確になった際に、国際社会は北朝鮮を核保有国と認めることになるのか。そんなシナリオを考えれば、米国にしてみれば、ひょっとしたら韓国に対して、「会談の招待なんて持ってこなくていいのに……」とすら考えているのではないかと思ってしまう。

 3つ目は、なんだかんだと会談が実施されることになり、やっぱり「非核化」が実現できそうにないことがはっきりすれば、その時に米国がどう出るのかという問題だ。おそらく、これまで対話で非核化させるために経済制裁を強化してきた米国にとっては、対話路線が失敗すれば、北朝鮮問題の大事な選択肢の1つがなくなることを意味する。そうなると、がぜん現実味を増すのは、軍事作戦ということになる。

 これまで日本では一部の専門家などが、米朝開戦が迫っていると主張してきた。具体的な日付を提示して、断定調で戦争勃発を予言していた人たちもいる。もちろん結果的に「ギリギリで回避されたのだよ」という言い分もあるのかもしれないが、筆者はよほど偶発的なことが続かない限り、開戦はないと見てきた。

 「そうはいっても、現に米軍は作戦計画を立てていると報じられているじゃないか」という指摘もあるかもしれない。米軍の関係者にも知り合いはいるが、彼らは最高司令官である大統領が誰であろうが、大統領の命令をいつ何時も実施できるように普段から訓練、計画を重ねているのである。最高司令官のために、それこそテーブルに全ての選択肢を並べて、日々、訓練とシミュレーションを続けている。突然、最高司令官から命令が出てから準備していては軍として機能していないに等しい。さまざまな選択肢を想定し、考えられる最高の軍事能力で作戦を成功させるべく準備をする。最高司令官の命に、「ノー」とは答えられないのだ。

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