新幹線台車亀裂、川崎重工だけの過失だろうか杉山淳一の「週刊鉄道経済」(2/5 ページ)

» 2018年03月16日 07時00分 公開
[杉山淳一ITmedia]

新幹線の「安全神話」は懐が広い

 亀裂を起こした台車は、直前に東海道新幹線内の熱センサーで高温が確認されている。ただし許容範囲だった。今後は危険認知レベルを厳しくする。この熱センサーは神奈川県小田原市の酒匂川と愛知県豊橋市の豊川の鉄橋に設置されているそうで、今回は危険の閾値に達していなかった。そのニュースを聞いて、JR東海はそこまで安全管理を徹底しているのか、とむしろ感心した。

 JR東海としては、亀裂の発見は問題であるとしても、列車が脱線転覆したわけではない。死者もけが人もなかった。むしろ、事故を未然に防いだという自負があるのだろう。これぞ安全神話である。

 しかし、これが自動車だったらリコール、不具合対策を呼びかける大変な事態だ。飛行機だったら、同型機や同じ部品を使っている機体は運行差し止めになるはず。航空業界は、危険を察知したら飛ばない。鉄道業界は危険を察知したら止める。止めるという言葉の裏には「走らせる」という前提がある。

 ネットでは「全ての新幹線を止めて、安全確認すべきではないか」という意見が見つかる。それを過激だと批判する声もある。JRは「新幹線を止めてしまったら影響が大きい」として、危険度が許容範囲内という車両を使っている。影響とは営業面か、公共交通か、その両方か。新幹線は航空機と違って墜落しないから、許容範囲を広く設定できるとも言えそうだ。つまり新幹線の「安全神話」は懐が広いわけだ。

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