芋づる式に現れた問題点を列挙してみよう。まず、異臭を察知したまま「問題なし」として運行を続けたJR西日本の危険認識レベルの低さが問題だ。これは運用面の危機管理を徹底して防げる。前述のように、JR東海も熱センサーの警告レベルを厳しく判定する。
次に発覚した問題は、台車を製造した川崎重工の台車製造工程で、溶接部分に他の部品を取り付けるために、平らに削った。そのため、台車の骨組みの1つ「側梁(がわばり)」の強度が損なわれた。これは本来はやってはいけない作業だった。
さらにいうと、削り込んだ理由は、側梁の曲げが正確に90度ではなかったからだ。本来は、部品の不良として、正しい部品に交換すべきところを、無理やり使った。
最近発覚した問題は、川崎重工だけではなく、日本車輌製造製の台車にも溶接部の傷が見つかった。JR東海は川崎重工の製造工程、危機認識そのものに問題があるとして、同社所有の新幹線の台車を全て、子会社の日本車輌製に交換すると発表していた。しかし、その日本車輌製にも傷がある。ただし、これは許容範囲だから、新幹線を運行しながら交換していく。また、JR西日本の保有車両については川崎重工製台車を使い続けるという。
主に報道されている問題点はこの3つだ。しかし、見過ごされている問題点が他に2つある。1つは、JR西日本の会見で触れられていた。「のぞみ34号」の当該車両は、当日、JR東海が東京で仕業点検を実施した。目視点検というけれども、ここで異常が見つけられなかったということだ。
結果として、この車両はいったん博多まで完走しているわけで、仕業点検に問題はないと判断されたようだ。ここをまず疑ってみる。前述のように熱センサーは閾値内としても平時と違う反応を示した。仕業点検で本当に異常がなかったとしたら、東京から小田原までの走行中に、亀裂が入るきっかけがあったのではないか。
もし、本当はこの時点で異常があったとしたら、点検の手順、危機検出方法に問題はなかったかを念のため再点検すべきだ。もちろん目視点検には限界がある。検査はいくらやってもキリがない。製造時の小さな傷なんて見つけられるわけがなく、そのために熱センサーなど、二重、三重のチェック機能がある。しかし、点検作業も精査してほしい。
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