新幹線台車亀裂、川崎重工だけの過失だろうか杉山淳一の「週刊鉄道経済」(3/5 ページ)

» 2018年03月16日 07時00分 公開
[杉山淳一ITmedia]

問題は事件発覚の手前にある

 芋づる式に現れた問題点を列挙してみよう。まず、異臭を察知したまま「問題なし」として運行を続けたJR西日本の危険認識レベルの低さが問題だ。これは運用面の危機管理を徹底して防げる。前述のように、JR東海も熱センサーの警告レベルを厳しく判定する。

 次に発覚した問題は、台車を製造した川崎重工の台車製造工程で、溶接部分に他の部品を取り付けるために、平らに削った。そのため、台車の骨組みの1つ「側梁(がわばり)」の強度が損なわれた。これは本来はやってはいけない作業だった。

 さらにいうと、削り込んだ理由は、側梁の曲げが正確に90度ではなかったからだ。本来は、部品の不良として、正しい部品に交換すべきところを、無理やり使った。

 最近発覚した問題は、川崎重工だけではなく、日本車輌製造製の台車にも溶接部の傷が見つかった。JR東海は川崎重工の製造工程、危機認識そのものに問題があるとして、同社所有の新幹線の台車を全て、子会社の日本車輌製に交換すると発表していた。しかし、その日本車輌製にも傷がある。ただし、これは許容範囲だから、新幹線を運行しながら交換していく。また、JR西日本の保有車両については川崎重工製台車を使い続けるという。

 主に報道されている問題点はこの3つだ。しかし、見過ごされている問題点が他に2つある。1つは、JR西日本の会見で触れられていた。「のぞみ34号」の当該車両は、当日、JR東海が東京で仕業点検を実施した。目視点検というけれども、ここで異常が見つけられなかったということだ。

 結果として、この車両はいったん博多まで完走しているわけで、仕業点検に問題はないと判断されたようだ。ここをまず疑ってみる。前述のように熱センサーは閾値内としても平時と違う反応を示した。仕業点検で本当に異常がなかったとしたら、東京から小田原までの走行中に、亀裂が入るきっかけがあったのではないか。

 もし、本当はこの時点で異常があったとしたら、点検の手順、危機検出方法に問題はなかったかを念のため再点検すべきだ。もちろん目視点検には限界がある。検査はいくらやってもキリがない。製造時の小さな傷なんて見つけられるわけがなく、そのために熱センサーなど、二重、三重のチェック機能がある。しかし、点検作業も精査してほしい。

photo 削っていい場所は、溶接時にふくらんだ黄色い部分だけ。周辺部も平らになるように削ったため、側梁の肉厚が減ってしまった。「[」「]」を90度回転させて「凵」「冖」にすれば、溶接部が側面になり、平らな部分を接合面にできる。しかし、弱い溶接部を側面にすると、万が一外れたときに上からの荷重を支えられないため、側面部分には溶接部をつくらない(出典:川崎重工報道資料

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