自動ブレーキについて知っておくべきこと池田直渡「週刊モータージャーナル」(2/3 ページ)

» 2018年03月19日 06時30分 公開
[池田直渡ITmedia]

回答と考察

 回答の内容をまとめると以下のようになる。

不具合の内容

 衝突の可能性がある歩行者を認識した場合、警報音の吹聴とともに減速度の低い自動ブレーキを作動させる機能があるが、その際、自動ブレーキの作動時間、および減速度の設定が不適切であったため運転者が予期していない減速を感じる恐れがある。

改善の内容

 全車両、衝突被害軽減ブレーキコントローラの制御プログラム書き換えるか、または対策品に交換する。

具体的な変更点

 予備制動作動時(弱ブレーキ)の減速感の改善。予備制動作動時の減速度を、いきなり約0.3Gのピーク値に上げず、緩やかに約0.3Gに達するように変更する。その結果、急ブレーキのような減速感が軽減してジワリとブレーキがかかる。

 カメラが1度歩行者と認識して弱ブレーキ動作後、歩行者でないと再認識した場合、変化した時点で弱ブレーキを停止する。これにより不要な弱ブレーキの時間を短くする。

 ランプ制御(加速度変化)の減速度を約0.2Gから約0.005Gに変更することによって、ランプ制御の減速感をほとんど感じないレベルにする。

サービスキャンペーン(リコール)

 上記の対策についてリコールを行い、無償修理を行う。対象車は、スイフトおよびワゴンR(デュアルセンサーブレーキサポート装着車)で、生産期間(16年12月26日〜17年8月23日)のもの。(サービスキャンペーンWebを参照

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 さて、率直に言ってまだ釈然としない。筆者がこのブレーキ異常を体験した場面はどちらも対車両だ。バイクとクルマという差はあれど、歩行者ではなかった。これについて回答が歩行者に限っているのはどういう意味なのか、あくまでも歩行者を例に挙げただけで、対車両でも同様なのか、それとも、対車両の問題は別に存在して対策されていないのか? この点についてスズキに再度問い合わせを依頼した。きっと回答には時間がかかるだろうが、もう待ってはいられないのでひとまず記事化する。また減速度約0.3Gは筆者が感じた0.5G程度の体感減速度より弱いが、これは自分が操作していない減速に対して、身構えておらず、実際以上に大きく感じた可能性もあり、それなりに納得できるものである。何れにしてもスズキから続報があり次第また書くことにする。

 またメールで得た上記回答に加えて、電話でも広報と話をした。その追加説明によると、筆者が最初に問い合わせをかけた段階で、スズキにはごく初期の報告が上がり始めたばかりだったらしい。最終的には101件の報告が上がっていると言う。

 問題を把握し、対策を講じ、新車装着モデルから対策品の装備を開始して、十分な効果があるかどうかの検証を行ってから、国交省に届け出、リコールを開始した。その流れを聞けば、国交省に届け出る前に筆者に回答できなかったのも分からないではない。筆者の記事が先に出たら国交省は激怒するだろうから。そういうお役所優先の手順には辟易とするが、言うに言えなかったスズキ自身の立場は理解できる。役所のメンツが情報開示を遅らせているのだ。

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