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TENGAの新規事業 「性の悩み」を真面目に解決国内外の医師を巻き込み事業化(2/3 ページ)

» 2018年03月20日 11時00分 公開
[昆清徳ITmedia]

医療分野に注目した理由とは?

 TENGAは創業当時から性を楽しむグッズの開発・販売で得たノウハウを医療分野でも生かせるのではないかと考えていた。具体的な取り組みをはじめるきっかけは、09年に金沢大学附属病院の医師だった小堀善友氏から同社にアプローチがあったことだった。小堀氏は男性の腟内射精障害の改善に取り組んでおり、共同研究ができないかという内容だった。TENGAは小堀氏の提案を受け入れ、性機能学会のサポートや国内外の医師・研究者とのコネクション構築を行うようになった。このチャンスを逃さなかったことが後々の新規事業創出につながった。

 TENGAヘルスケアの立ち上げで中心的な役割を担ったのはTENGAで海外事業を手掛けていた佐藤雅信氏(TENGAヘルスケア取締役)と、TENGAの創業期を経営管理面から支えていた鈴木雅則氏(TENGAヘルスケア代表取締役)の2名だ。鈴木氏と佐藤氏に新規事業立ち上げの経緯、製品開発の苦労、本社を巻き込んでいくまでの道のりを聞いた。

photo 佐藤雅信氏(左)と鈴木雅則氏(右)

 最初の壁はTENGAの松本光一社長を説得することだった。佐藤氏は「ルーペで精子を観察することに本当にニーズがあるのか、社長は懐疑的でした」と振り返る。性を楽しむグッズに対する利用者のニーズは顕在化しているが、性の悩みに関するニーズはなかなか見えづらい。

 佐藤氏は正確な事実に基づいたストーリーをつくることで松本社長を納得させることにした。不妊の原因が男性側にあるケースもある。今はそれほど知られていないが潜在顧客は必ずいる。性の悩みを解決できた顧客はTENGAによって性を楽しむ顧客になってくれる――。

 「最後の決め手はこれまで信頼関係を築いてきた医師の声でした」(佐藤氏)

 多くの医師が新事業の趣旨に賛同してくれている事実を伝えることで新規事業の承認が得られた。将来性もありそうだということで新卒採用したTENGA社員2人も新会社に専属された。地道に学会活動のサポートをしてきたことが成果を生んだ。

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