「どうしてもTENGA本体の仕事が優先され、新規事業のサポートは後回しにされがちでした」
当時の苦しみを佐藤氏はこう振り返る。事業を軌道に乗せるには新商品の開発、流通チャネルの構築、広報・宣伝などさまざまな面で本社の協力が不可欠だ。例えば、TENGAでは性を楽しむ新商品の使い心地を社員が試し、開発担当者にフィードバックを行う。メンズルーペでも精度向上のために多くの人に実際に使ってもらう必要があったが、協力者の確保は困難を極めた。「社内で誰にも相談できずに抱え込んでしまいました」と佐藤氏は話す。
鈴木氏は当時の反省点として新規事業担当者と本社社員の情報格差を埋められなかったことを挙げる。いくら担当者が「性の悩みを解決する」というミッションに意義を感じていても、きちんと伝えなければ周囲は理解してくれない。本社の社員は営業部や開発部といった部署と連携する業務フローのなかで働いており、ゼロから立ち上げる新規事業担当者の苦労はわからない。
鈴木氏は社内の協力者を増やすために地道な説得を繰り返した。新規事業の推進に欠かせない社内のキーマンを説得したいが、多忙で時間を割いてくれそうにない。そこで、隙間時間ができるタイミングを狙って声をかけるようにした。直接話すことで、自分の想いや助けが必要なことをしっかりと伝えるためだ。空回りすることもあったが、鈴木氏はめげなかった。
「とにかく我慢することが多かった」と語る鈴木氏を支えたのは新規事業の明確なビジョンだった。「ビジョンをしっかりと持たないと新規事業の立ち上げは難しいです。性の悩みを解決すると自分が本気で思わなければ周囲の共感も得られません」(鈴木氏)
社内を巻き込むことができたおかげで製品開発やチャネル構築などを迅速に進められるようになった。「急がば回れ」の精神で焦らなかったことが奏功した。無事にメンズトレーニングカップとテンガメンズルーペを世に送り出すことができた。特にテンガメンズルーペはAmazonの「検査キット」というカテゴリで1位を獲得するベストセラー商品に育った。
「性の悩みを解決して、性を楽しめるようになってほしい」
鈴木氏と佐藤氏の願いは多くの人に届いている。
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