【一問一答】ピーチ・バニラ統合 「生き残り」賭けた3社の思惑とはANA・ピーチ・バニラのトップが語る(2/2 ページ)

» 2018年03月22日 20時10分 公開
[青柳美帆子ITmedia]
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――バニラの事業は、率直に言って「成功」か「失敗」か。

ANA片野坂社長: 成功だと思っている。バニラは台湾路線という戦場でまず勝ち、競争相手が現れて苦しくなったものの、競っていた2社が経営破綻という結果になり、生き延びて再び主力となっている。こうした勝ち残る経験ができたのは大きい。また、鹿児島や奄美大島路線は現地の人々からの評価がよく、確実に成長させていることにも価値がある。

バニラ五島社長: バニラの目指していたことは、「低運賃を提供し、お客さまや就航都市に喜んでもらえること」。奄美大島はバニラで路線ができたことで、観光客数が急増する結果となり、よい成功例になった。地元が喜ぶとともに、会社としても収益性が上がるウィンウィンの関係を築いていきたいと考えており、統合後もそこを目指していく。

――ANAとのマイル提携などはあるのか。また、バリューアライアンス(LCCによる国際航空連合、LCC間での乗り継ぎを可能にする)にバニラは加入しているが、ピーチは加入していない。今後はどうなるのか。

ピーチ井上CEO: マイルについては検討中。LCCなので、コストが上がらないことを前提にしながら、グループ内でのシナジーを出すことを考えていきたい。バリューアライアンスに関しては、詳細を知らない状態なので、知った上で統合完了後に判断をしていきたい。

中距離LCCの構想

――中距離LCCを統合後に進めるという発表があったが、以前は中距離LCCはビジネスとして成立しないという考えだったように思う。なぜ方針が変わったのか。

ピーチ井上CEO: 確かに、従来は「中距離については当面やらない」と申し上げていた。しかし、競争の激化や、航空機の性能の向上など、さまざまな環境変化を勘案し、「25年には中距離LCCをやらないと勝てない」と判断するようになっていた。しかしバニラと統合すれば、20年ごろにその計画を前倒しすることができる。生き残るための方針変換。機材はまだ決まっていないが、将来的にはワイドボディー機(2列通路の大型機)にできれば。「ノープロフィット・ノービジネス(利益がなければビジネスはない)」の方針を守りながら、事業性をいかに担保するか検討していきたい。

ANA片野坂社長: 今年2月に発表した18〜22年の中期計画で、小型LCC事業の収益拡大と、中距離LCC領域への進出を発表している。LCC事業を22年度には17年度比で約2倍に成長させるというもので、両社の統合も算定して組み込んだ計画。統合でユニットコストを下げながら、収入面では伸びが期待できる。20年には統合後のピーチが中距離LCCを担う。両社のパイロットや全社員が力を合わせてやっていく。

 今回統合にあたって、両社の社長がそれぞれの社員に向けて説明を行った。「2社でアジアのリーディングLCCになる」というビジョンの共感を作るのが必要。統合に向けては機材の変更などを含め、時間をかければいいというわけではないが、丁寧にやっていくことが重要と考えている。

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