10年後の「快適な住宅」とは何か LIXILの展望自分で“判断”する家へ(2/3 ページ)

» 2018年03月28日 07時00分 公開
[加納由希絵ITmedia]

進化していくトイレ

――センサーでデータを収集し、暮らしに生かす取り組みが進んでいるのですね。すでに実用化している商品はありますか。

 スマートフォンをトイレとつないで、最適な洗浄位置などをアプリで設定できるサービスはすでに商品化しています。家族が使用した後でも、すぐに自分が設定した状態にできます。アプリでトイレ日記をつけたり、トイレ内のスピーカーから音楽を流したりすることもできます。

――トイレの機能がどんどん広がっていきますね。

 高齢化に対応する、という意味では、事故防止だけでなく、予防医療に向けた研究開発も進めています。その1つが、健康をチェックするトイレです。排せつ物には健康情報が詰まっているため、その成分を毎日チェックできれば、病気の予防につながります。血圧を気にしている人は日常生活で血圧を測っていますが、それと同じように、数値を参考にしてお医者さんに相談できます。

 今のトイレの便座は、お父さんと子どものお尻の大きさは違うのに、同じ形のものを家族みんなで使っています。今後、新たな素材開発やデジタル技術などによって、個人に最適な形のトイレを提供できるようになるかもしれません。「パーソナルトイレ」「カスタマイズトイレ」といったものが出てくる可能性もあると考えています。

photo トイレや階段、キッチンなどのデータを取って、安全性や快適性の向上を目指す

――健康状態や温度の感じ方など、個別に対応してくれるような家になっていくのですね。

 IoT住宅の方向性としては、「個人対応」だけではありません。今、Airbnb(エアービーアンドビー)など、自分の空間をシェアスペースにするサービスも広がっています。そのようなトレンドに対応して、クローズドの空間をパブリックの空間と共有するような暮らし方が出てくるのではないかと思います。

 これは昔の日本にもありました。土間文化です。住宅の一部が近所の人などの憩いの場になっていました。昔、オープンだった空間が時代の変化でクローズになっていき、再度オープンな考え方が出てきています。シェア文化という意味だけでなく、高齢者の見守りという意味でも必要性が高まっています。現在はセキュリティの面から共有空間の整備を考える必要があり、そこにIoT技術を活用することができます。

――そのトレンドに対して、建材メーカーができることとは何でしょうか。

 1つの例としては、仕切り、パーテーションです。完全に家の中と外を遮断する仕切りではなく、セミパブリックの空間を作るような、柔軟性のあるドア、窓、壁が考えられます。昔の土間は誰が入ってくるか分からなかったですが、今は安全性を担保しないといけません。IoTを活用した建材で、利便性とセキュリティを両立させることが考えられます。

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