ファッションは「店に行く」から「店が来る」時代になる?アダストリアの“出張クローゼット”イベント

» 2018年03月28日 18時30分 公開
[青柳美帆子ITmedia]

 服は「店に買いに行くもの」から「店が売りに来るもの」になる時代が来るかもしれない。女性向けファッションブランド「Andemiu(アンデミュウ)」を展開するアダストリアが、働く女性に向けた“出張クローゼット”イベント「FIT ON ME」を人材サービスのパーソルキャリアと協力して実施した。

アダストリアが“出張クローゼット”イベント「FIT ON ME」をパーソルキャリアと開催。アダストリアのアンデミュウ営業部長の栄木雅人さんに狙いを聞いた

 3月20〜23日の3日間、パーソルキャリアの大手町オフィスにブースを設置。アンデミュウの服を社員がオフィスで体験できるという取り組みだ。オフィスの一角にジャケット、シャツ、ワンピースなどの服がずらりと並ぶ。パーソルキャリアの社員が連れ立ってブースに訪れ、楽しそうに服を選んでいる。3日間で女性社員360人超が訪れたという。

パーソルキャリアのオフィスにブースを設置
アンデミュウの服がずらりと並ぶ

 なぜアパレルが“出張”するのか。2016年の国内アパレル市場は、前年比98.5%の9兆2202億円(矢野経済研究所調べ)。市場は縮小傾向にあり、オフラインの店舗はオーバーストア(店舗過剰)の状態にある。その一方で、EC(インターネット通販)チャネルのシェアは年々高まっている。アダストリアは早期にECに取り組み、2018年2月期第3四半期におけるEC比率は16.2%と業界内でも高い。

 アダストリアのアンデミュウ営業部長の栄木雅人さんは「ECは大きく成長しているが、試着や接客などの“洋服を体験してもらう”点についてはまだ課題がある。店舗やECサイト以外で、お客さまとの新しいチャネルを創造しようと考えた。そこで『お客さまがお店に来てくれるのを待つのではなく、こちらからオフィスに会いに行く』というアイデアが生まれた。今や、飲み物もお菓子もオフィスにある。服もオフィスにあっていい」と話す。企画は17年秋ごろに立ち上がったという。

 アンデミューのコンセプトは「女性の働く服」。「FIT ON ME」の取り組みには、女性の働き方へのメッセージもある。「働く女性が自由に使える時間は少ない。ファッションを楽しみたいが、お店に行く時間がない女性も多い。女性の働き方が変化し、多様化している今、アパレルができることを発信したい」(栄木さん)。

 「FIT ON ME」は試験的なイベントで、ブースで服を販売しておらず、1人につき1着をプレゼントしている。目的は利益ではなく、新しいチャネルに対する利用者の反響を知ることだ。

イベントでは服は販売せず、試着とフォトブースでの撮影後にプレゼントした

 パーソルキャリアの社員から「モチベーションが上がる」「わくわくする」という声が上がり、手応えもある。普段働いている場所で服を試着することで、「この服を着てここで働いている自分」を具体的にイメージできる効果もありそうだ。一過性のイベントではなく、女性の働き方に対して同じ思いを抱いている企業と組んで継続的に取り組んでいき、働く女性を応援したいという。

 「買う人の利便性を考えれば、いろんな場所にチャネルがあっていい。無印良品のコンビニ参入や、ユニクロの駅ナカ出店はそういった流れの1つ。ただ現状は『ファッションはオシャレでなくてはいけない』というマインドがまだまだ邪魔をしている。ボーダーラインがない考え方をしていかないとアパレルは進化できない。本質的なメッセージやストーリーがあれば、どこにお店があってもブランドの価値は損なわれないはず」(栄木さん)

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