IT企業が続々参加 沖縄発オープンイノベーションが目指すもの補助金に頼らない(2/2 ページ)

» 2018年03月29日 06時45分 公開
[伏見学ITmedia]
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技術力があるだけではダメ

 オープンラボラトリが特に力を入れるのが次世代の人材育成だ。

 ここで扱っているのが最先端の技術であるため、世の中で習得している人材は多くはない。さらにそうした人たちは多忙で、後進を指導する時間が取れないため、なかなか技術の裾野が広がらなかった。そこで沖縄オープンラボラトリの中で専門プログラムやカリキュラムを設けて、スペシャリストを育成できたら面白いのではというのがスタートだ。

 「いくら日本の技術を武器に世界のトップを走ろうと気合いを入れても、スペシャリストを育てる仕掛けがないとうまくいかない」(伊藤理事長)

 初年度から各社の優れたエンジニアに声を掛けたり、大学や高等専門学校の先生に協力してもらって受講生となる学生を集めたりした。まずは手探り状態でもいいからやってみて、良いところ、悪いところを洗い出していったのである。

 2年目、3年目と実績を積んでいくうちに、スキルアップした学生が就職にうまくつながるような成果も生まれた。一方で、運営側としては別の課題も見えてきた。

スペシャリスト育成プログラムの合宿風景 スペシャリスト育成プログラムの合宿風景
プログラムコンテスト プログラムコンテスト

 「使えるエンジニアを育てるのも大事だが、リーダーとして仕事を引っ張るだけでなく、仕事を部下などに教えられるような人材をどう育てるかが重要だと感じた。実際、そうした考えを持つリーダーは自分のできる範囲内で部下を育成してきたが、日本を挙げてそうしたリーダーを創っていかないと海外には勝てない」と伊藤理事長は指摘する。

 そこで立ち上げたのが、クラウド技術を使いこなす実践的なスキルを持つとともに、産業界で活躍できる人材を育成することを目的とした「スペシャリスト育成プログラム」である。これは8〜9チーム(1チームあたり2〜3人)が参加して、6カ月後のプログラムコンテストに向けて成果物を作り出すというもの。基本は学生だが、1〜2チームは企業で働く人たちが参加している。「(育成プログラムの)メンターと学生は主従の関係ができてしまうが、参加に社会人がいれば、学生は同じ目線に立って悩みなどを相談できたり、逆に社会人もフランクにアドバイスできたりする。だから意図的に社会人を混ぜているのだ」と、NTTコミュニケーションズ 技術開発部の佃昌宣担当課長は狙いを説明する。

左から佃氏、オキットでクラウドサービスグループを担当する鄒曉明氏(スペシャリスト育成プログラム出身)、伊藤氏、土橋氏 左から佃氏、オキットでクラウドサービスグループを担当する鄒曉明氏(スペシャリスト育成プログラム出身)、伊藤氏、土橋氏

 IT人材育成プログラム自体は世の中にあふれるほど存在するが、沖縄オープンラボラトリの取り組みのユニーク性とは何なのか。

 「しっかりとした技術を身に付けるためにハンズオンが中心。課題は自分たちで決め、その解決に向けてビジネス現場に身を置いている専門家のアドバイスを受けられるのは、なかなかほかでは体験できない。彼らのアドバイスも実践的で、例えば、プログラミングの中身をこう変えればいいといったものではなく、そもそもこのプロジェクトのゴールは何かという話になる。教科書的なトレーニングにはならないのだ」(伊藤理事長)

 育成プログラムへ参加する学生は、琉球大学や沖縄工業高等専門学校といった地元だけでなく、京都産業大学や慶應義塾大学、公立はこだて未来大学など全国に広がっている。さらにはアジアの学校も関心を持ち始めている。マレーシアのある大学とはIT人材育成などで連携し、いずれプログラムコンテストにも参加してもらう計画だという。

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