夏は活況、冬は閑散だった大町温泉を星野リゾートはどう活性化した?「界 アルプス」が再開業(2/2 ページ)

» 2018年04月04日 06時45分 公開
[伏見学ITmedia]
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かつて冬場は閑散期

 同施設は元々、「仁科の宿 松延」という温泉旅館だった。06年から星野リゾートが運営している。その後、「星野リゾート 松延」に名称を変更し、12年から現在の界ブランドで営業している。

 星野リゾートが運営に入ったことで、一体何が変わったのだろうか。

 1つは、収益増に向けた冬場のてこ入れだ。

 かつてはこの施設に限らず、大町温泉全体は冬場の集客がほとんどなかった。温泉に立ち寄る人をちらほら見掛ける程度。そんな場所だった。そうした中、星野リゾートが入ってきたことで潮目が変わる。

界 アルプス総支配人の上打田内健三郎氏 界 アルプス総支配人の上打田内健三郎氏

 当初は星野リゾートも苦戦したが、白馬五竜スキー場までクルマで30分で行けるという点に目を付け、スキー客の需要を喚起しようとした。まずはスキー場まで宿泊者が利用できる無料シャトルバスを走らせ、次にスキー場にマウンテンラウンジを作るなどして利便性を高め、スキー客に対する界 アルプスの認知度を高めていった。さらには、施設の敷地内にかまくらを作ったり、子どもたちが雪遊び体験できるコーナーなどを設けたりして、冬場ならではの施設の魅力をアピールした。それが功を奏して冬場の稼働率は徐々に向上、リニューアル前には6割にまで高めた。

 今回のリニューアルでは、星野代表の肝いりで、使用したスキー板やスノーボード、ブーツなどを保管、乾燥できるスキー乾燥室も備え付け、いっそうスキー客の満足度を高めようとする。

 界 アルプスの取り組みを見て、周囲の旅館やホテルもスキー客をターゲットに冬場の集客に力を入れ出した。今では同じようにスキー場にシャトルバスを走らせたりと、大町温泉郷全体でスキー客を取り込んでいる。

今や冬の名物となったかまくら 今や冬の名物となったかまくら

 町を盛り上げようと、界 アルプスのスタッフも地域活性化に熱心に取り組んでいる。自ら地元の酒蔵や農業の生産者などと交流し、そこから界 アルプスで実現できそうなコラボレーションのアイデアなどを考えてくるようになったという。

 リニューアル後の具体的な企画についてはまだこれから議論していくが、例えば、夏場は公道を挟み込む形で、お面売り場や金魚すくいの浴槽などを雁木の下に並べて、一帯を縁日風に演出するなど、宿泊客以外にも開かれたスペースとして使えれば、地域の魅力アップにもつながっていくのではと考えている。

(取材協力:星野リゾート

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