北海道新幹線札幌駅「大東案」は本当に建設できるか杉山淳一の「週刊鉄道経済」(3/5 ページ)

» 2018年04月06日 07時00分 公開
[杉山淳一ITmedia]

まだ「決定」ではない

 ところが、せっかく合意した東案(その2)について、鉄道建設業界OBや鉄道・運輸機構内から「本当にJR北海道のもくろみ通り作れるか」という声が上がっているという。本当に作れるという条件が整わなければ、国が工事変更を認可しない。国としてみれば、いったん認可した案を覆されたわけだ。合意しました、はいそうですか、とはならない。これはメンツの問題ではなく、手続きの仕組みの問題である。

 3月29日の5者会議資料の確認事項では、乗り換え跨線橋などの費用、施工はJRが実施すると明記された。これはJR側の在来線改良工事となるため、新幹線駅建設の関連資料から省かれている。しかし、この乗り換え跨線橋は構造的に無理があると指摘されている(関連リンク)。

 認可見直し案で鉄道・運輸機構は在来線改良計画を示し、在来線の運行、増発に影響なしと示している。これに対してJR北海道は、東案(その2)の在来線乗り換え跨線橋の設計図面を示していない。動く歩道、エスカレーター、エレベーターの設置について、3月12日の5者会議後の会見で、JR北海道は巧みに避けていた。会見では、以下のようなやりとりがあった。

北海道新聞: 駅の利便性向上を札幌市から求められている。階段、エレベーターは設置するが、エスカレーターは設置しないという説明に受け取れた。設置しない可能性はあるのか、そのあたりの方向性はいつくらいに決まるのか。また、東口にVIP用の車寄せや貴賓室を設置する方針であったと思うが、一般の方向けに何か設置するといったことはあるか。

JR北海道: バリアフリー基準では、階段とエレベーターを設置することとなっている。乗り換え跨線橋から各ホームへ分散されるので、エレベーターで対応できるかを検討していき、利便性、工事費の両面から見ていきたい。比較設計には、荷重の検討にコンピュータ計算が必要であり、しばらく時間がかかる。一般の方向けの施設については、ランニングコストと利使性向上による利用者増を見ながら、今後検討していきたい。

北海道放送: 645億円には乗り換え跨線橋も含むとのことだが、乗り換え跨線橋分はどれくらいか。

JR北海道: 乗り換え跨線橋の内訳については差し控えたい。新幹線施設として、税金で整備されるものについては納税者の理解を得るためにも、開示していくべきであり、これまでもそのように対応してきた。ただし、乗り換え跨線橋はJRの工事として実施していくものであり、今後コストダウンのために競争入札をする予定だ。予定価格を公表するようなことは差し控えたい。

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