東南アジアで相次ぐリゾート地閉鎖 観光客膨張で極限状態浄化が必要に(3/3 ページ)

» 2018年04月11日 17時38分 公開
[ロイター]
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<遅すぎた閉鎖>

ボラカイ島とマヤ・ビーチの閉鎖は「テストケース」となる可能性があり、人気ビーチリゾートを抱える他の諸国は注視するだろうと、シンガポールの大学テマセク・ポリテクニックのビジネススクール講師を務める観光学が専門のベンジャミン・カシム氏は指摘する。

photo 4月6日、フィリピンの人気観光地ボラカイ島が、同国のドゥテルテ大統領から「下水のたまり場」と呼ばれたことを受け、清掃のため6カ月間閉鎖されることになった。東南アジアのビーチリゾートを訪れる観光客が急増する中、観光地にプレッシャーが高まっていることを示している。写真は、タイのタオ島で2014年9月撮影(2018年 ロイター/Chaiwat Subprasom)

インドネシアの非営利団体は、政府に対し、同国で最も人気のあるバリ島の「環境危機」に取り組むよう訴えている。同島には昨年、550万人以上が訪れた。

インドネシア当局は、バリ島の稲田をゴルフコースや別荘などに変える無計画な開発を許したとして長年批判を受けている。年に数カ月、ビーチは海から打ち上げられたプラスチックのごみでいっぱいになる。

にもかかわらず、ウィドド大統領は景色の美しい自国の他地域に10カ所の「新しいバリ島」建設を推進しようとしている。

「バリ島の環境状態は現在、加速度的に悪化が進んでいる」と、同国の環境NGO「Indonesian Forum for Environment」のI Made Juli Untung Pratama氏は指摘。

「原因は、バリの環境を適切に考慮せずに行われる大規模な観光宿泊施設の建設にある。そのような開発がバリに環境危機をもたらしている」と同氏は語った。

ボラカイ島のような観光地の閉鎖は、今に始まった事態ではない。マレーシア当局は2004年、世界有数のスキューバダイビングの名所があるシパダン島の全ホテルを閉鎖した。同島の生態系を保護するためだ。その後、観光客の数も制限した。

しかし、このような徹底的な対策は遅きに失することがしばしばで、地域全体でより持続可能な解決策が必要だと指摘する声もある。

「積極的な環境保護対策は、後手に回る対策よりもはるかに効果的なアプローチだ」と、観光コンサルティング会社「ホーワスHTLインドネシア」のマット・ゲビー氏は指摘。

「サンゴ礁や侵食されたビーチ、荒廃した森林を6カ月で回復させることなどできない。積極的な保護こそ、リゾート地の長期的な持続可能性には不可欠だ」と同氏は語った。

(翻訳:伊藤典子 編集:山口香子)

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