XC40「ボルボよお前もか」と思った日池田直渡「週刊モータージャーナル」(3/4 ページ)

» 2018年04月16日 06時30分 公開
[池田直渡ITmedia]

最初は好印象で始まった

 試乗に用意されたのはXC40 T5 R-Design 1st Edition。ボルボがDrive-Eと呼ぶモジュラー設計エンジンシリーズのうち、ガソリン2リッターの直4インタークラー・ターボを装備するT5に、スポーティな内外装を持つR-Designトリムを組み合わせ、さらに1st Editionなる発売記念の特別装備を加えた仕様だ。価格は559万円。300台限定で発売されたこの特別仕様はすでに完売だという。

 XC40では、T4とT5の2種類のエンジンが選べ、T4は190馬力300Nm、T5は252馬力350Nmとそれぞれ出力レベルが違う。駆動方式はT4にはFFとAWDが用意されるが、T5にはAWDのみの設定になっている。要するに筆者が試乗したのは、ハイパワーで4駆でスポーティトリムの限定車ということになる。

 乗り込んで最初に感じるのはシートの出来の良さだ。SPA採用の各モデルには、ボルボの最も高価な新設計シートが用意されており、それは素晴らしいシートだった。フラッグシップ用に開発したそれをXC60にまで投入したことはちょっとした驚きだったが、さすがにXC40では同じシートは使えなかったらしい。それでもマッサージ機能などの豪華装備を省いただけで、同様の設計思想を持つシートを新たに起こし、XC40に搭載した。多分このクラスでこれに並ぶレベルのシートは当分出てこないだろう。

 エンジンを始動して、アクセルを踏むと、タイヤをゆるりとひと転がしさせるデリケートな操作がとてもやりやすく、ここでも極めて高評価を与えられる。最近のボルボはエンジンのレスポンスやサスの硬さを変える「ドライブモード」なる機能が付いているが、辛口のダイナミックにするとこの緻密さが台なしになるので、ベストはノーマル相当のコンフォート。のんびり派の人がロングドライブで使うのであれば多少ラフに扱っても穏やかなエコを選ぶことをお勧めする。

 後に路上で先行車に合わせて速度制御していても、モード選択を誤らない限り、随意に速度調整ができるこのエンジンはすこぶる快適だった。もちろん踏めば252馬力もあるので十分以上に速いが、昨今速いだけなら他にいくらでも候補がある。それより緻密な速度制御ができることの方が価値は高い。

 駐車場から出るために、ステアリングを切ると、こちらも硬質でリニアなフィールでレベルが高い。初期のXC90に見られたような電動パワステの手応えがところどころでランダムに変わる不自然なフィールもなく、ごく自然に操作できる。20インチのオプションホイールを履かされているのを見たときは、一瞬不穏な感じがしたが、タイヤの銘柄を見るとピレリのPゼロ。ならば大丈夫かもしれないと少し安心した。このタイヤを選ぶエンジニアの仕事は信用に値する。

 実際に走ってみると、20インチの巨大なホイールをバタつかせることもなく気持ち良く走る。タイヤが減ったときいくらかかるかを心配しない人であれば、忌避する理由は何もない。ちなみに先述のドライブモードには好みのセッティングを自分で作れるインディビジュアルも選べるので、コンフォートの設定からステアリングだけを一段重くした設定をお勧めしておく、好みの範疇ではあるが、ステアリングが少々軽いのでそこを補正したくなるからだ。

 実はXC40のシートはとても良いが、シートの性格は決してスポーティではない。少しペースを上げるとサイドサポート不足で体が動く。ステアリングが軽いとその動きを拾ってラインが乱れるのだ。XC40は本質的には都会派のSUVであり、スポーティにも走れるが、そこにチューニングを合わせてはいない。

 むしろ普段使いを重視している。バケットシートのような横方向サポートを持たせれば、日常では拘束感が強くなるし、乗降性も阻害される。このあたりはリソースの割り振りの問題なのだ。例えば入り組んだ都市の路地を走ることを想定すれば、デフォルト設定のステアリングの重さがこれくらい軽いことも頷ける。ただ山道ではそれでは少々都合が悪いので、別途調整した方が良いし、そういう機能がちゃんと盛り込まれているということだ。

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