日本郵政、正社員の手当削減はタブーなのか同一労働同一賃金を考える(3/4 ページ)

» 2018年04月20日 06時30分 公開
[やつづかえりITmedia]

手当のあり方は時代に応じて変化している

 社員にとって、手当がなくなるのは損のように思えるが、一概にはそうとも言えない。

 郵政グループの場合は正社員と非正社員の間の差異が問題になったが、手当の規定によっては正社員の中でも不公平感を生むものがある。例えば、勤続手当などは中途で入社して古参の社員以上に成果を出している社員の不満を生むかもしれない。共働きの社員にとっては、専業主婦の妻を持つ男性社員が配偶者扶養手当を受け取れることに釈然としないものを感じるかもしれない。時代の変化によって、社員のニーズも変わるのだ。

 実際、コスト削減の必要や社員のニーズの変化に合わせて手当の見直しを図る企業は少なくない。例えば、トヨタ自動車は15年に配偶者手当を段階的に廃止し、代わりに子ども手当を増額することを決めた。子どものいない専業主婦家庭にとっては収入減になるが、「子育てしながら働きやすい社会に」という社会の要請を反映した合理的な変更と言えるだろう。

 住居手当についても、厚生労働省「就労状況総合調査」によると、05年調査では44.8%の企業が支給していたが、15年には40.7%に減っている(調査対象は本社の常勤者30人以上の企業)。今、個人の生活スタイルも多様化しており、同じ都心の会社に勤めていても、職場に近いタワーマンションに住む人もいればシェアハウスに住む人もいるし、自然豊かな環境を好んで地方との2拠点居住を選ぶ人もいる。そういう状況において、一律の住居手当はなじまないのではないだろうか。

時代とともに働き方や生活スタイルは変化しているのだ 時代とともに働き方や生活スタイルは変化しているのだ

 また、住宅手当がいくらだからどこに住もう、というよりは、給料とさまざまな手当を合わせた総合的な収入を基に生活設計を考える人も多いだろう。しかし、企業の求人情報には年齢別の月給や年収の目安などは書かれていても、手当については「住宅手当あり」といった記載のみで、支給条件やその金額など細かい点まで明示しているところはほとんどない。社員の生活を支援するという名目でありながら、社員からするとどの程度当てにできるものなのか分かりづらいのだ。賞与や退職金が手当を含まない基本給をベースに計算されるケースが多いことも考え合わせると、企業が手当に充てている原資を基本給に回すほうが、社員にとってはありがたいのではないだろうか。

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