土肥: 2018年1月17日に、英国政府が「孤独担当相」というポストを新設しました。この話を聞いたとき、意味が分からなかったんですよね。「孤独を担当するって、どういうこと?」といった感じで。詳しく調べてみると、メイ首相は「孤独は現代社会の悲しい現実」として受け止めていて、市民団体が行った調査でも、驚くような結果が出ていました。「寂しい」と感じている大人が68%もいて、「5年前より、人との関わり合いが減った」という人が38%もいる。
岡本: 孤独を大きな問題と受け止めているのは、英国だけではありません。米国人(45歳以上)の35%が「寂しい」と答えていて、換算すると約4260万人が苦しんでいることになる。オーストラリアでも60%の人が「しばしば孤独を感じる」とし、82.5%が「孤独感を覚えることが増えている」という結果に。
世界規模で、多くの人が孤独に向き合っていることが分かってきました。特にここ数年、「孤独というエピデミック(伝染病)」という考え方が広がっているんですよね。
土肥: 孤独の伝染病? 孤独はひとりで悩むものなので、他人に広がることはないのでは?
岡本: いえ、そうではない調査結果が出ているんです。シカゴ大学のカシオッポ教授がマサチューセッツ州の住民を調査したところ、孤独な友人を持つ人は孤立感を覚える割が高く、友人または友人の友人にまで伝染効果があることが明らかになりました。
土肥: 友人が引きこもれば、本人も孤独になるといった流れで、悪循環の連鎖が起きるわけですね。
岡本: はい。また、アメリカ・ブリガムヤング大学のホルトランスタッド教授は「世界中の多くの国々で、『孤独伝染病』が蔓延(まんえん)している」と発表しました。また、オバマ大統領の下で公衆衛生局長官を務めたマーシー氏は「病気になる人々を観察し続けて分かったが、その共通した病理(病気の原因)は心臓病でも、糖尿病でもない。それは孤独だった」と、孤独が健康に与える負の影響を指摘しました。
土肥: 日本で生活していると、なかなかそうした情報に触れる機会が少ないような。知らないうちに「孤独」が大変なことになっていますね。
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