伊藤忠がファミマを子会社化、商社とコンビニの微妙な関係とは?“いま”が分かるビジネス塾(2/3 ページ)

» 2018年04月23日 07時30分 公開
[加谷珪一ITmedia]

セブンがナンバーワンであり続けられた理由

 小売店は顧客が望む商品を提供するのが使命であり、メーカーや卸が売りたい商品を販売するというビジネスではない。小売店が商社など卸に商品をコントロールされるようになってしまったら、小売店としての魅力は一気に薄れてしまう。顧客の要求を満たす商材がなければ、仕入れ先を変更するのは小売店にとっては当たり前のことである。

 実際、セブンはそうした方針を貫いており、伊藤忠によるファミマ出資後も、魅力的な商品があれば伊藤忠からも買い続けた。セブンと伊藤忠の関係がギクシャクしたことをきっかけに、コンビニ事業で出遅れた三井物産がセブンに営業攻勢をかけ、一時は両社の関係が密になったこともある。だが、セブンはその後、三井物産との取引も必要に応じて見直している。

顧客主義が功を奏したセブン&アイ・ホールディングス 顧客主義が功を奏したセブン&アイ・ホールディングス

 セブンが業界で断トツのトップであり続けられたのは、最初に市場に参入し、立地条件の良い店舗が多かったという理由もあるが、取引先の変更も厭(いと)わない、徹底した顧客主義が功を奏していたのは間違いない。

 こうした過去の経緯を考えれば、商社によるコンビニの買収は必ずしも両社にとってプラスにはならないことがよく分かるだろう。

 商社によるコンビニの買収には三菱商事とローソンという先例がある。

 三菱商事は17年2月、約1400億円の資金を投じてローソンを子会社化している。ローソンと三菱商事の関係は、01年にローソンの親会社だったダイエーが三菱商事に株式を譲渡したときから続いてきた。グループ企業として良好な関係を保っていたにもかかわらず、子会社化に踏み切ったのは三菱商事側の事情によるものだ。

 三菱商事は、高い利益を上げるローソンを子会社化することで、連結決算においてローソンの業績を自社に取り込むことができる。三菱商事の経営陣にしてみれば、てっとり早く業績を上げる手段となり得るのだ。

 一方、ローソンの既存株主からすると、子会社化されてしまうと商品戦略の自由度が低下してしまう。実際、買収完了後、初の株主総会では、三菱商事との利益相反に関する質問や意見が株主から相次いだ。もしローソンの業績が低迷するような事態となれば、最終的に三菱商事にも損失が発生するので、三菱商事の株主から見ても結局は同じことになる。

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