パナソニック若手有志の新たな挑戦 「香り導くサーキュレーター」発売へ南部鉄器と有田焼で作られた「現代の香炉」(4/5 ページ)

» 2018年04月23日 10時07分 公開
[今野大一ITmedia]

実際に作ってみると風が中心部分に集まらず

 しかし、簡単には実現しなかった。工芸品の綺麗な形を見せながら風を送り出す技術をコアンダ効果によって実現するというアイデア自体は良かったものの、実際に作ってみると風が中心に集まってこなかった。スリットから吹き出す風は、ファンの回転が強すぎるために旋回してしまい、中心部分に集まらなかったのだ。

 旋回を防ぐためには、風の回転を止める整流板をうまく入れなければならない。この整流板の大きさ、数、ファンからの距離がポイントになった。あまり大きい整流板を入れてしまうと、整流板自体が抵抗になって風が出てこない。必要最小限の整流板を入れて風を整える必要があるのだ。小田は1カ月程度シミュレーションを繰り返すことで、「大きさ10ミリ、数は24個、ファンからの距離15ミリ」という最適な結果にたどり着くことができた。

phot 商品の展開図
phot 外側についている仕切りが整流板

 送風の壁は突破したものの、次に待ち受けていたのは工芸品のカバー部分と本体部分をいかにつなぎとめるかであった。フィルターの汚れを掃除する際など、メンテナンスをするためにはカバー部分と本体部分を取り外しができる構造にしなければならない。しかし、南部鉄器や有田焼をあくまでもきれいに見せることがコンセプトであったため、ネジ穴などは空けることはできない。

 ネジを打つことができないので、磁石の力を使うことにした。カバー部分の方に鉄板を接着剤で留め、本体部分の磁石とくっつけるという構造だ。これが奏功した。カバー部分の鉄板と本体部分の3つの磁石がくっつき、支えられたのだ。磁石と鉄板で留めることによって、ネジを不要にしている。この構造により、カバー部分と本体部分の取り外しができるようになった。鉄板とカバー部分の接着作業はすべて国内で実施しており、「メイドインジャパンのクオリティーだからこそ可能になっている」(小田)。

phot 左がカバー部分で右が本体部分。カバー部分の銀色の鉄板と本体部分にある3つの磁石がくっつくことでネジ留めが不要になっている

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