野球が誰よりも好きなことを自覚していたからこそ自分がユニホームを再び着用して指揮官に就任すれば、それまで抑えていたリミッターが外れ、逆に曲げられないポリシーをどんどん貫いてフロント幹部や経営陣と衝突してしまうかもしれない。そんなことになってしまったら古巣に迷惑がかかってしまう。犬猿の仲ともささやかれる松田元オーナーや現経営陣に“売り込み”をかけなかったのも衣笠氏がこのように自己分析し、あえて距離を置き一歩も二歩も引いていたからのような気もする。
ついに古巣とは交わることなく夢と消えてしまった鉄人、衣笠氏のカープ復帰。そこには「たまたまタイミングがなかった」の一言では済まされない、複雑な人間模様と舞台裏のドラマが激しく交錯している。
いろいろな事情があるとは思うが、せめて広島現経営陣には衣笠氏の追悼試合は近々に組んでほしいと願う。このままスルーなんてことは絶対にないだろうし、そのような寂しい流れにならないと信じたい。もう世に二度と出ないであろう「鉄人」の死を悼み、天国へ送り出すためにも――。合掌。
国内プロ野球、メジャーリーグを中心に取材活動を続けているスポーツライター。セ・パ各12球団の主力選手や米国で活躍するメジャーリーガーにこれまで何度も「体当たり」でコメントを引き出し、独自ネタを収集することをモットーとしている。
野球以外にもサッカーや格闘技、アマチュアスポーツを含めさまざまなジャンルのスポーツ取材歴があり、WBC(2006年第1回から2017年第4回まで全大会)やサッカーW杯(1998年フランス、2002年日韓共催、2006年ドイツ、2010年南アフリカ、2016年ブラジル)、五輪(2004年アテネ、2008年北京、2017年リオ、2018年平昌)など数々の国際大会の取材現場へも頻繁に足を運んでいる。
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