160円でJRを“大回り乗車” 新緑と彩り駅弁、唐揚げそばを味わう12時間杉山淳一の「週刊鉄道経済」GW特別編(5/6 ページ)

» 2018年04月27日 08時00分 公開
[杉山淳一ITmedia]

エキナカにイートインスペースが欲しい

 両毛線の終着、小山駅は他の路線のプラットホームと離れている。フラワーバーク集団に紛れて歩き、群れを離れて水戸線へ向かう。ほとんどのお客さんは東北本線へ。東京方面行きの列車に乗るようだ。水戸線のプラットホームには、ほとんど人がいなかった。次の友部行きは午後3時3分。あと35分ほど。電車はすでに待っていたけれど、501系。またロングシートか……。

photo 水戸線よ、オマエもか

 しかし腹は減っている。食べたい。待合室はないけれど、プラットホームに人は少ない。ベンチで食べちゃおうか。見回すと、電車に背を向けたベンチの端で女の子が何か食べている。ハンバーガーか、サンドイッチか。ならば、反対側の隅で食べよう。電車を背にすると、正面は「HAKUOH UNIVERSITY」と書いたビル。カッコいい建物だけど、食事の風景としては……。

 「旬彩弁当はるいろ」は、四角い箱を9マスで仕切っていて、確かに色彩豊か。斜め3マスにご飯を配置。黄色は、白いごはんにのった錦糸卵、タケノコごはんに青葉の緑。赤い縁取りの花レンコンの下に茶飯がある。おかずは健康志向かな。赤魚の西京焼き。香ばしく魚肉のうまみが強い。山菜の煮物。なんだかほっとする味。

 天ぷらはかまぼこ、ウド、そして鶏肉の大葉巻きか。さっぱりしているようで、衣の風味がふわっとくる。漬物は大根のさくら漬け……じゃないな。大根とラディッシュのピクルスで、シナモン風味か。ほう、ちょっと強い酸味。天ぷらの油っぽさをこれでリセットして、ロールキャベツ。ここは洋風コーナーか。締めくくりは桜餅。米粒が見えるタイプは道明寺っていうんだっけ。これに対して、薄い小麦粉の皮は長明寺っていうらしい。

photophoto 「旬彩弁当はるいろ」。たかべん製にしては珍しく明るいパッケージ(微妙に失礼)。こちらもおかずたくさん。初めて出会う味もある

 食べ終わって、ふと見上げると、線路の向こうの自転車置き場の管理人さんと目が合った気がする。見られていたか……。まあ仕方ない。旅の恥はかきすてってやつだ。

 それにしても、駅弁を食べにくい環境になってしまったなあ。駅弁を食べたい人は、新幹線や特急、グリーン車に乗る人だけじゃないんだぞ。駅弁販売店が次々と廃業していく中で、このままでは駅弁は廃れてしまうかもしれない。

 車両はロングシートになっていく。通勤通学客を少ない車両数で運ぶためだろうから、これは仕方ない。でも、せめて普通列車のお客さんも駅弁を食べられる環境がほしい。列車がダメなら、駅に「駅弁イートインスペース」を作ってもらえないかな。ガラス張りの待合室の片側をカウンター席にするくらいでいいんだけど。

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