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AI採用っていいじゃないか いや、弱点もある常見陽平のサラリーマン研究所(3/4 ページ)

» 2018年05月04日 08時00分 公開
[常見陽平ITmedia]

AI採用でいいことがある

 AIがエントリーシートを読むことに対して抵抗のある者もいるだろう。「人間が読んでくれないなんて」と。しかし、現場に目を向けると、学生からのエントリー数が膨張しているので、担当者は疲弊している。こうした現実があるので、大学の「ラベル」である程度絞らざるを得ないのだ。いわゆる“学歴フィルター”である。大学名でエントリーシートの通過を決めるなど、バッサリ切ってしまうのである。

 学歴フィルターを行っている企業は少なくないので、AIを導入すると、全員のエントリーシートを読んでもらえるので「まだまし」という考え方もできる。有名大学の学生はラベルだけの争奪戦になるが、そうではなく、応募者全員の「レベル」を見て評価することができる。

 現状、AIがエントリーシートを読み込む精度は96%程度である(少し前にみたデータなので、現在は上がっていることが推測される)。「100%じゃないじゃないか」という人もいるだろうが、そうした人にお聞きしたい。「人間なら100%なのか?」と。人間は疲弊するし、個人によるブレもある。AIだと労力はかからないので、働き方改革が進むかもしれない。

 AIによる面接については、遠方の学生から支持されているという。わざわざお金と時間をかけて都市部に来なくても、面接を受けることができるからだ。これは、2年後に発生すると言われている「就活2020年問題」の対策になるはず。東京五輪の年は、開催期間はもちろん、その前から交通機関、宿泊施設、会議施設を適切な価格で確保するのは困難になるからだ。こうした背景があって、AI採用を導入する企業が増えてくるのではないかと見ている。

 たくさんのデータが蓄積されているので、徐々に精度も上がっていく。採用に詳しくない現場の面接官よりも精度は高いとも言える。模倣や虚偽のチェックも可能だ。

 このように書くと「AI選考っていいじゃないか」と思われたかもしれないが、弱点もある。それは、採用のごく一部しか代替しないことだ。

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