「インスタ映え」はお中元の救世主となるか百貨店、廃れ行く「習慣」にはもう頼れない(2/2 ページ)

» 2018年05月09日 16時20分 公開
[服部良祐ITmedia]
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止まらないお中元・お歳暮離れ

 百貨店が贈答品市場でインスタを意識し始めたのは昨年ごろから。背景にあるのは深刻なお中元・お歳暮離れだ。矢野経済研究所の推計によると、2018年の市場規模は1兆7380億円と、4年前より1000億円近く減る計算になる。大丸松坂屋百貨店の担当バイヤーも「贈答品を買う習慣がまだあるのは高齢層だが、需要が今後拡大するわけではない。インスタ映えを通じて30〜40代の女性層を新たに取り込みたい」と語る。そもそも、今回のカタログのタイトルは「大丸 夏の贈り物」。若い人向けに、あえてお中元という古い習慣を意識させないようにしているという。

photo 「ジャズ羊羹」は作る際にジャズを「聴かせて」いるとか

 若年層取り込みと並んで百貨店が狙うのがネット通販だ。大丸松坂屋百貨店でも、贈答品の売り上げ自体は減り続けているものの、その中でネット通販の割合は拡大中。2015年のお歳暮商戦では数%だったが17年には18%まで伸びた。同社のバイヤーも「百貨店の贈答品売り場を訪れて箱入りの食品を買う人は減った。今は料理として美しく皿に盛り付けられた商品画像を見て買う」と説明する。「インスタ映えするね」とピンときた商品をすぐスマートフォンから買えるよう、カタログには商品ごとにQRコードを載せた。

 Instagramを利用したマーケティングは特に食べ物と相性がよく、メーカーや小売りが若い女性をターゲットにこぞって打ち出している。百貨店もまた、高齢層や古い習慣頼りの販売手法から脱却を図っていると言える。ただ、Instagramなどネットの力を利用した売り方で問われるのが「実店舗が売る」意義だ。「お取り寄せ」がブームになったように、消費者は今や零細メーカーの商品もネットで検索し、直に買える時代。百貨店は、「インスタ映え」に留まらない「わざわざ百貨店でモノを買う価値」を求められているのかもしれない。

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