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コニカミノルタ常務を直撃 「副業解禁に踏み切った理由」「カメラ事業撤退」経験から得た危機感(4/4 ページ)

» 2018年05月10日 08時00分 公開
[勝木健太ITmedia]
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外国人社員の離職経験から学んだこと

――イノベーションを起こすには尖った人材も必要だと思うが、大企業の中では扱いづらいということはないのか。

若島: 09年より外国人の採用に力を入れており、現在も新卒採用100人のうち15%程度が外国人だ。ただ最近まで、外国人の離職率が日本人社員と比べて高かった。「入社前後で会社のイメージにギャップがあった」、「キャリア形成のために留学したい」など様々な退職理由があった。だが最も問題だったのは、海外の企業に比べて「昇進のスピードが遅い」というものだった。当時は管理職の任用年齢はおおむね40歳前後だったが、「そんなにかかるのであれば他の企業に行きたい」という理由があり、これには危機感をもった。

 そこで最近、新卒7年目、グローバル調達を担当している32歳のウズベキスタン人社員を管理職に登用した。いきなり登用したわけではなく、何度も本人と話し合い、本人のやる気を尊重した結果だった。今では語学力を生かし、他の日本人の管理職と比較しても全く引けを取らないほど活躍している。我々は従業員にきちんと力を発揮させるのが仕事なので、従来のやり方ではダメなのだと痛感した体験だった。イノベーションを起こすためには、尖った人財にきちんとチャンスを与えて、当然会社もサポートしなければならない。

phot 約4万5000人の従業員のうち3分の2を外国人が占める

副業を「武器に」優秀な人財を獲得・育成する

――人材獲得のための手段として、副業を解禁するケースもある。

 今回の制度導入については、イノベーションの創出が第一の目的だが、働き方の多様化を推進することで、結果として、優秀な人財の獲得も期待できる。

 当社は人材こそが会社の財産だと考えており、人材ではなく「人財」と呼んでいる。特に、IT人財の獲得については注力しており、世界的に優秀な学生が集まるインド工科大学に8年前から足を運んで採用活動を実施している。当時はまだ、現地に赴いて採用活動をしている日本企業は少なかった。

 さらに近年では、データサイエンスやIoT領域に精通した人財については、特に積極的に採用活動をしている。そういった優秀な人財を副業という「武器」を使って採用していきたい。通常とは異なる業務を経験することは、個人の能力の向上にも役立つ可能性があり、副業の解禁は、人財育成の観点でも、効果を期待できると考えている。

phot データサイエンティストなどIoT人財の採用に注力している

――従業員が持続的に成長していくために、どんな組織を目指しているか。

若島: 多様性を保ち続けるためには、会社自体が従業員にとって魅力ある「プラットフォーム」となることが重要だ。テクノロジーの発達により、我々は「いつでも・どこでも・誰とでも」働くことができるようになった。それに伴って、個人と企業の関係性も大きく変わりつつある。1社の中で成長できるケースもあれば、複数の会社で経験を積んで成長するケースもある。

 当社を辞めたのでサヨナラというわけではなく、一度外に出てもまた会社に戻ってくればいい。イノベーションを起こし続けるという意味では、社内の従業員だけでなく、社外の優秀な人財とコラボレートする姿勢も重要だ。そのためには、従来の会社組織の枠組みにとらわれない思考がますます必要となるだろう。

 副業に関しても事例を積み重ねていく中で、ルールも柔軟に変えていけば良いと考えている。どうすれば従業員1人1人のパフォーマンスを最大化できるか、 どうすれば従業員1人1人に気持ち良く働いてもらえるかを考えることが何よりも重要であり、我々はその点を最優先に考えている。

著者プロフィール

勝木健太(かつき・けんた)

株式会社And Technologies代表取締役。1986年生まれ。幼少期7年間をシンガポールで過ごす。京都大学工学部電気電子工学科を卒業後、新卒で三菱UFJ銀行に入行。4年間の勤務後、PwCコンサルティング/有限責任監査法人トーマツを経て、フリーランスの経営コンサルタントとして独立。約1年間にわたり、大手消費財メーカー向けの新規事業/デジタルマーケティング関連プロジェクトに参画した後、大手企業のデジタル変革に向けた事業戦略の策定・実行支援に取り組むべく、株式会社And Technologiesを創業。人生100年時代のキャリア形成を考えるメディア「FIND CAREERS」を起点として、「転職Z」「英会話教室Z」「プログラミング教室Z」等の複数の情報サイトを運営。執筆協力実績として、『未来市場 2019-2028(日経BP社)』『ブロックチェーン・レボリューション(ダイヤモンド社)』等がある。


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