こうしたチャット形式のツールが普及してくると、社内におけるコミュニケーションも変わってくるはずだ。具体的には、電子メールではなく、ビジネス用のチャットでコミュニケーションを取るというスタイルがより現実的になってくるだろう。
ビジネス用のチャットとしては「Slack」というサービスが有名だが、今のところ導入しているのは、ベンチャー企業やIT企業などごく一部に限られている。だが、業務の効率化を考えた場合、業種にもよるがこうしたチャットの導入は劇的な効果を発揮する可能性がある。
電子メールはいかようにでも使えてしまうので、多くの人はこのツールが持つ基本的な特徴をあまり意識せずに使っている。だが、電子メールは紙のメモの延長線上として出来上がったツールであり、多くの人と情報をシェアする目的には合致していない。
電子メールの「CC」はカーボンコピーの略だが、これはメモを複写して必要な人に送るという企業文化から派生している。まずは1対1のやり取りがあり、その情報をシェアすべき人を厳密に選択することが大前提となっている。
逆に言えば、多くの部署が相互に連携し、それぞれが業務連絡やアイデアなどを無数にやり取りするという環境に電子メールは合っていない。ひどい企業では、読み切れないほどのCCメールが行き交い、どれが重要な業務連絡なのか分からなくなっているはずだ。このような企業の場合、チャット形式のコミュニケーションツールを導入すれば、驚くような効果が得られるだろう。
こうした新しいツールが普及してくれば、電子メールは対外的、かつ正式なやり取りという限定的な用途にシフトしていく可能性が高い。電話に至っては、極めて特殊なツールという形にならざるを得ないだろう。
世代間で電話をかけることの是非についての議論があるが、こうした従来型のツールは、良い悪いの問題ではなく、自動化を行う各種ツールの普及によって、その役割を終えることになるのかもしれない。
仙台市生まれ。東北大学工学部原子核工学科卒業後、日経BP社に記者として入社。
野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。独立後は、中央省庁や政府系金融機関など対するコンサルティング業務に従事。現在は、経済、金融、ビジネス、ITなど多方面の分野で執筆活動を行っている。
著書に「AI時代に生き残る企業、淘汰される企業」(宝島社)、「お金持ちはなぜ「教養」を必死に学ぶのか」(朝日新聞出版)、「お金持ちの教科書」(CCCメディアハウス)、「億万長者の情報整理術」(朝日新聞出版)などがある。
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