韓国Samsungの「誤算」 高級TVでソニーやLGに後塵有機ELテレビ撤退が……(4/4 ページ)

» 2018年05月16日 06時00分 公開
[ロイター]
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<決算数字は語る>

こうした企業間の闘いが決算に与える影響は、先月一段と鮮明さを増している。LGは先月、テレビ事業の四半期利益が、77%と飛躍的な伸びを記録し、1─3月期の利益率が過去最高の14%に達したと発表。

サムスン電子は先月26日、テレビ及び家電製品を扱う家電部門の四半期利益が32%減少したと発表。製品ラインアップを変更し、低・中価格帯テレビの一部販売を中止したことで、前年同期から減収となっていると報告した。

10年間で総額8000億円の損失を計上していたソニーのテレビ事業は、2017年度に黒字に転じた。

黒字化を目指したソニーは、販売する海外市場を絞り込み、サプライヤーを多角化し、有機ELとLCD双方のディスプレイを提供した。またサムスン電子とのLCD合弁事業を解消している。

ソニーの戦略は実を結んだ。

世界のテレビ市場におけるソニーのシェアは昨年、金額ベースでは10.2%にすぎなかったが、高級テレビ市場では首位に立った。シンハン・インベストメントのアナリスト、ジョン・ソー氏は、同社の9─12月期営業利益率が10.7%に達したと指摘する。

高級テレビ市場において、サムスンはさらに苦戦を強いられる可能性がある。同市場における有機ELテレビのシェアが、昨年の51%から今年は71%に上昇すると、IHSは予想しているためだ。

しかも、6月には2018年サッカーFIFAワールドカップのロシア大会が開幕する。1カ月にわたって開催されるワールド杯は、常に世界中で最も多くの視聴者を集めるテレビイベントであり、テレビメーカーにとって、販売に拍車をかける絶好の機会となる。

サムスンの元ディスプレイ技術者で、現在はUBIリサーチを率いる李忠壎(イ・チュンフン)氏は、撤退決定時点ではサムスンが有機EL技術を未成熟だと考えていたため愚かな決定とは思えなかったが、今となっては「サムスンは失敗を犯したようだ」と語る。

有機ELテレビを製造再開する計画があるかを尋ねると、サムスンはより競争力のある他の技術に注力するという従来の立場を繰り返した。

サムスンのテレビ事業部を率いる韓宗熙(ハン・ジョンヒ)氏は先月、記者団に対し「(戦略に)変更はない」と語った。

ディスプレイ分野に詳しいアナリストからは、サムスンが価格面で反撃する可能性があることから、まだ勝敗が決したわけではないという声も出ている。

オンライン情報によれば、サムスンの中位機種である55インチQLEDテレビ「Q7F」の価格は、昨年の2500ドルから今年は1900ドルにまで低下。一方、LGの55インチ有機ELテレビ「C7」は、当初2017年に3500ドルで発売されたが、後継機種の「C8」は今年2500ドルで発売されている。

「われわれの目標は、何年連続でナンバーワンになることではなく、永遠にナンバーワンであり続けることだ」とサムスンの韓氏は語った。

(翻訳:エァクレーレン)

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