関西ローカルなのに知名度は全国区 「551蓬莱」が成長続ける理由長浜淳之介のトレンドアンテナ(4/4 ページ)

» 2018年05月22日 06時00分 公開
[長浜淳之介ITmedia]
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品質を保つための「150分ルール」

 今は無きそごう心斎橋本店へ57年に出店したのを機に店舗を拡大し始めた。そこから高島屋大阪店、松坂屋大阪店(現在は閉店)など、1週間ほどの催事による出張販売からスタートする形で徐々に広げていった。催事で売れた実績をもとに百貨店から場所をもらい、テークアウト専門店を出店するといったことを続けてきた。

 駅への出店は、南海なんば駅に78年に出店したのが最初で、阪急やJRに拡大していった。新大阪駅に出店したのは85年である。

 そうした過程で、豚まんが徐々に大阪名物として認識され、市民権を得ていったのだ。

 全国の催事に足を運ぶようになったのは、十数年前からのこと。それまでは近畿圏内で出店していない百貨店の催事で販売を行っていたが、出店が続々と決まっていくと、催事に足を運ぶ意味がなくなってきたためだ。

 店舗が拡大できた背景として、ここ20年ほどで高速道路をはじめ、大阪近郊の道路事情が格段に改善されていることが挙げられる。551蓬莱では大阪市中心部の浪速区にある工場から商品を配送しているが、遠い所に運ぶとイーストの作用で皮の生地が発酵しきってしまい、もっちりした食感が失われ硬くなってしまう。そこで、「150分圏内配送」の縛りを設けている。

 発酵を考慮して、工場から店舗へ朝に1回だけ商品を配送するのでなく、1日に2〜5回と小口の配送を行っている。

 150分圏外に出張する催事の場合はもっと大変で、小麦粉を持ちこんで現地で生地を練り、具材も現地で刻むようにしている。ミニファクトリーをお客からは見えない裏方に設けることで、実演販売を実現している。

 4トントラックで機材一式を運んで乗り込む551蓬莱の催事は、「プロレスの興行のようだと揶揄(やゆ)されるほど」(広報・八田氏)。ここまで気合いの入った催事は聞いたことがない。

 551蓬莱の課題を挙げるとするならば、さらに店舗を拡大して成長するために、関東や東海のような人口が集中する地域に第2工場をつくり、百貨店などに常設店舗をつくる体制を構築する必要があることだろう。そのためには、思い切った設備投資が必要になる

 蓬莱には、豚まんを超えるほどの商品を開発しなければ新商品として売ってはならない社内ルールがあるが、高いハードルを超えた強力なヒット商品を生み出すパワーに期待したい。

著者プロフィール

長浜淳之介(ながはま・じゅんのすけ)

兵庫県出身。同志社大学法学部卒業。業界紙記者、ビジネス雑誌編集者を経て、角川春樹事務所編集者より1997年にフリーとなる。ビジネス、IT、飲食、流通、歴史、街歩き、サブカルなど多彩な方面で、執筆、編集を行っている。共著に『図解ICタグビジネスのすべて』(日本能率協会マネジメントセンター)など。


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