ラフプレーと財務職員自殺 “服従の心理”の末路河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(5/5 ページ)

» 2018年05月25日 07時00分 公開
[河合薫ITmedia]
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権力者こそ、冷静に

 そもそも権力者というのは、自分の行為を正当化します。権力を手にしている人はそうでない人にくらべ、過ちを正当化しやすくなることが、膨大な研究結果で示されています。

 ある研究では「約束の時間に遅れそうだからスピード違反でクルマを走らせる」という行為について、「権力のある」グループと「権力のない」グループに分けて評価をさせたところ、

  • 権力のあるグループに属する人たちの多くは「自分がスピード違反する行為」を「仕方がない」と回答
  • 同じ行為を他者がやったときには、「法律に違反するなど、許せない行為だ!」と厳しく評価する

 というダブルスタンダードな傾向が認められました。

 スポーツをやっていれば誰だって勝ちたい。誰だってスターになりたい。その思いが強ければ強いほど、指導者はスポーツの本来の目的に立ち戻る必要がありました。現場を指導するコーチたちも、プレーする選手たちも、権力者内田氏に認めてほしいという気持ちがあることを、監督としてもっと冷静に受け止めなければならなかった。内田氏はいつからか、監督ではなく、ただの権力者に成り下がっていたのではないでしょうか。

 そして、これは日大アメフト部に限ったことではなく、政治の中枢でも起きていることを忘れてはなりません。

 財務省の改ざん問題は、まさしくラフプレーです。そして、その改ざんを指示された男性は……自殺しました。

河合薫氏のプロフィール:

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 東京大学大学院医学系研究科博士課程修了。千葉大学教育学部を卒業後、全日本空輸に入社。気象予報士としてテレビ朝日系「ニュースステーション」などに出演。その後、東京大学大学院医学系研究科に進学し、現在に至る。

 研究テーマは「人の働き方は環境がつくる」。フィールドワークとして600人超のビジネスマンをインタビュー。著書に『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアシリーズ)など。近著は『残念な職場 53の研究が明かすヤバい真実』(PHP新書)


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