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ヨドバシの接客力を支える「すごい教育」8年連続顧客満足1位のワケ(3/5 ページ)

» 2018年05月31日 06時00分 公開
[昆清徳ITmedia]

社内で自主的に勉強会を実施

 ヨドバシは新入社員に対して接客方法の基本などを教えているが、それ以外で会社が企画するような「社員研修」はあまりないという。社員が行う自主的な勉強会や朝礼・終礼を通して、接客レベルや商品知識を向上させている。

 ヨドバシカメラマルチメディアAkibaの副店長である川田修平氏はその様子を次のように解説する。

 「各売り場の責任者やベテラン社員が最新機種の概要についてまとめたレジュメをつくり、他の社員に配布しています。また、メーカーの担当者の方を講師役とする勉強会を店舗内でほぼ毎日行っています」

 商品の購入につながるような接客方法についても、朝礼や終礼の場で共有している。例えば、エアコンを購入したお客の多くは設置工事を休日にしてほしいと考えている。しかし、休日には工事が集中するため、希望日の予約が埋まっていることが分かると購入を諦めるケースもある。そこで、平日に設置工事を行うメリットを伝え、いかに購入につなげるのかが店員の腕の見せどころとなる。接客ノウハウや成功事例を社員同士で教えあっているのだ。

 お客から寄せられた要望や質問を店内で共有するようにしている。例えば、ある若手社員がお客から質問されてうまく回答できなかった場合、朝礼や終礼で売り場の責任者に報告する。「1人が分からなかったことは、10人が分からない」(日野専務)という考えのもと、どのように対応すべきだったかを再度社員間で確認している。

お客さまに勉強させてもらう

 ビックカメラと同様、ヨドバシは人通りの多い駅前を中心に出店している。店舗数は23店と同業他社より少なく、郊外型の店舗が多いヤマダ電機とは対照的だ。

 この出店戦略が人材育成の面でプラスに作用している。来店客数にばらつきがでる郊外店と違い、平日でも帰宅途中に立ち寄るお客が多いため、店員1人当たりが接客する回数が増え、結果として接客レベルが向上するというわけだ。「当社の社員はお客さまに勉強させてもらっています。いろいろなお客さまとのやりとりを通して、いやでも精鋭集団になっていきます」(日野専務)。特に、商品知識が豊富な50〜60代のお客から若手社員が“指導”されることも多いという。

 また、「やみくもに出店したら社員のレベルは確実に落ちる」と日野専務は言い切る。出店と人材育成のバランスを常に意識しているのだ。

 同業他社の中には、メーカーが派遣する販売員を積極的に受け入れることで人員を確保するケースもあるが、ヨドバシではあくまで社員中心の接客にこだわっている。こういった点も、人材育成の面でプラスに作用しているのだろう。

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