日大アメフト問題に学ぶ、不祥事を炎上させない対応策不祥事対策は、ディズニー映画に学べ(5/5 ページ)

» 2018年06月01日 07時28分 公開
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組織不祥事の際の生き残る道は、徹底的で自発的な情報開示

 日本社会では、以前はそうした制度設計がされていなかったため、「隠したほうが得」という打算が働き、不正をひた隠しにする傾向が強かった。しかし、現在では正直者が救われる制度設計が進んできている。

 例えば、カルテル(談合)が公正取引委員会にバレる前に、自分から告白した会社は、課徴金が減額または免除される仕組みになっている。日本でもリーニエンシー制度(課徴金減免制度)が普及してきており、2018年には大手ゼネコン業界に激震を走らせた。

 また、バッドニュースの後出しが、企業活動の継続を困難ならしめるような致命的なダメージにつながるという事件もしばしば発生しているところである。

 組織的不祥事が発生した際に、「ひとまずそっとしておこう」「事実の開示を小出しにしよう」という誘惑にかられるかもしれない。

 または、日大のように個人の責任に押し付けたり、政治家や官僚のように「部下の記憶違い」か「思い出せません」方式で、なんとか切り抜けようとするかもしれない。しかし、それは事態をより深刻化させかねない「破壊の魔法」であることを肝に銘じよう。

 従業員個人の不正だったとしても、場合によっては不正を隠した人が刑務所に入れられることすらある。バッドニュースが発生した際は、勇気を持って開示する強さを持とう。

 今回の日大アメフト部の対応にしても、大学組織を守ろうとするのではなく、『モンスターズ・インク』のサリーを見習って自発的に開示し、責められる前に厳罰を科さなければならなかった。迅速に透明な開示を行なってこそ、「不祥事を起こしたけど、自浄作用が働く組織」としてセカンドチャンスをもらえるのだから。

著者プロフィール:ムーギー・キム

 INSEADにてMBA(経営学修士)を取得。外資系金融機関の投資銀行部門、外資系コンサルティングファーム、外資資産運用会社での投資アナリストを歴任した後、香港に移り、アジア一帯のプライベートエクイティファンド投資に従事。フランス、シンガポール、中国での留学を経て、大手バイアウトファンドに勤務。現在はシンガポールを拠点に、世界中のベンチャー企業の投資・支援を行なっている。英語・中国語・韓国語・日本語を操る。

 著書に、『最強の働き方』(東洋経済新報社)、『一流の育て方』(ダイヤモンド社)『最強の生産性革命』(竹中平蔵氏との共著、PHP研究所)、『最強の健康法』(SBクリエイティブ)などがある。公式HP:https://www.moogwi.com/


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