メガ銀がキャッシュレス決済事業に参入、NTTデータと競合も本気で対抗できるか(2/2 ページ)

» 2018年06月05日 12時50分 公開
[ロイター]
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<巨人・NTTデータと競合も>

しかし、クレジットカード業界にはCAFISに対する不満があるのも事実。「品質や安全性には優れている」(先のカード発行会社幹部)との評価もある一方で、「新しいサービス導入のスピードが遅い」(同)などの声もある。

さらにNTTデータは「1件当たりの利用手数料は決して高くない」(担当者)とするが、手数料が重荷になっているとの指摘もある。

三井住友はここに目を付け、これまでCAFISに頼っていた決済情報処理をグループ内に取り込むことを狙う。「脱NTTデータ」を進め、決済事務を「垂直統合」することで、これまで同社に支払っていた手数料を削減するとともに、より迅速で柔軟な決済の仕組みづくりを目指す。

一方、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)は5月、インターネットの高速配信事業を世界展開する米アカマイ・テクノロジーズと共同で、新型ブロックチェーン(分散台帳技術)を活用した高速で安価な決済システムを開発したと発表した。

MUFGの新決済システムでは、現在毎秒10万件弱にとどまる決済処理を100万件以上に高めることが可能という。コンビニなどでもキャッシュレス決済が普及していることもあり、1件当たりの決済金額は小額化が進み、決済手数料の重みが相対的に増している。「決済コストの削減に大きく寄与する」(広報部)という。

MUFGは19年度以降に、決済インフラ事業としてサービスを始める。ただ「NTTデータと競合することはない。NTTデータに使ってもらえるようなサービスを考えたい」(広報部)としている。

独占的市場に新規参入が図られれば、サービス改善やコスト削減が進む可能性はある。ただ、NTTデータはもともと銀行とは親密な関係だ。国内の金融機関のすべてを結びつけ資金決済を担う「全銀システム」のベンダーでもあり、また、多くの金融機関の基幹システムも請け負う。大手行のある幹部は「これまでの歴史や、世話になった関係は重い。NTTデータに本気で対抗できる金融機関はないのではないか。フィンテックベンチャーのような新興勢力の方が、有力な対抗軸になりえると思う」と話している。

(布施太郎 編集:田巻一彦)

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