68年、GDPで英国を抜いたことで、「世界第2位の経済大国」になったことをきっかけに、日本人は「日本のホニャララは世界一」という報道がシャワーのように浴びせられた。
詳しくは拙著『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)をご覧になっていただきたいが、『朝日新聞』の「日本」が「世界一」という見出しが躍る日本礼賛記事をカウントしたところ、「世界第2位の経済大国」以降から際立って増加傾向となっている。
77年、王貞治がホームラン本数で世界一も達成。翌78年には日本人の誇りと言っても差し支えない「自動車」の生産台数が世界一にもなった。
すごいのは王さん個人であり、経済的な成功も人口が爆発的に増えているという「追い風」であるにもかかわらず、多くの日本人はこんな勘違いを始める。
「オレたちって世界のなかでもかなりイケているんじゃね?」
テキトーなことを言うな、この反日ライターめというお叱りが飛んできそうだが、われわれがかなりイタい「勘違いヤロー」になっていたのかということは「社会の木鐸」を名乗る新聞が、次から次へと赤面ものの勘違いを連発していることからも分かる。
象徴的なのが、『読売新聞』(1983年7月11日)だ。ここでデカデカと一面を使って、『「気くばり」は世界一 日本人スチュワーデス』という記事を出している。それまでキャビンアテンダントを、欧州とブラジルからしか採用していなかった仏Air France(エールフランス)が日本人女性を24人も採用したことを受け、「接客態度が世界一」だからと自画自賛しているのだが、なんのことはない。この時期というのは、海外旅行者が右肩上がりで増え、出国者数も400万人を突破するなど、世界のいたるところへ日本人が出張っていったのだ。
中国人観光客対応で日本の飲食店が中国人留学生のバイトを大量に雇っていることを受け、中国メディアが「中国人の接客態度は世界一」と触れ回ったら多くの日本人は「かなりイタい勘違いだな」と失笑することだろう。
では、なぜバブル期のわれわれは、こんな赤面ものの勘違いをしたのかというと、戦前から続く「大和民族は世界のどの民族よりも優れている」という神話から脱却できていないからだ。
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