「なぜ最近の日本の大企業に不祥事が多いのか」という報道では、経営者の問題であり、その多くがサラリーマン社長で、小粒になったからだという意見が多かった。短期的に実績を上げることを求められる経営者は、自分の任期中の業績にしか関心がないため、組織に対して人事権を振りかざして無理難題をやらせて、組織がその場しのぎの行動に出る、ということらしい。確かにこうしたことも背景にはありそうだ。サラリーマン社長も、ある意味では株主の使用人であり、経営者、従業員ともに企業との関係が変わってきたのかもしれない。
例えば、株主配当等と労働分配率に関する推移があるのでご紹介したい(図1)。この図が示すのは、大まかに言えば2000年代以降、企業のもうけから、従業員の人件費を削減して、株主等への配当支払いに充てるようになったということである。
いわゆる「失われた20年」を経て、日本の大企業は株主の発言権が拡大し、経営者は株主配当を増やすことに汲々とするようになった。こうしたことも、経営が近視眼的となり、自分の任期以降に実績となるような長期的な施策には関心が薄くなるという弊害だろう。高い配当を出すことが企業経営の目的になれば、それはある意味、避けられないことかもしれない。こうした側面では、経営者に対して過去に遡った責任追及をルール化するなどの歯止めが必要だと感じる。
ただ、個人的に思っているのは、この50年ぐらいの間に、日本が急速にサラリーマンの国になったということも影響しているのではないか(図2)(図3)。
今や日本の労働者の9割以上がサラリーマンで、欧米と比較してもその構成比は高い国となったようだ。高度成長とともに、農村から都市部のオフィスや工場に勤め、労働力として誘致された団塊世代、そのジュニア世代が今産業界の主力の世代となっている。
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