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企業不祥事続発から、サラリーマン国家になった日本を考える小売・流通アナリストの視点(3/3 ページ)

» 2018年06月20日 06時30分 公開
[中井彰人ITmedia]
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 この世代は既にサラリーマン家庭の出身であり、自営業者などの感覚はあまり分からない人が多いだろう。自営業者にとっては、収入の源泉は顧客であることは言わずもがなであろうが、サラリーマンは組織人として分業して働くため、顧客の顔を見ないで暮らしている人は結構多い。サラリーマンにとっては、顧客より自分の人事権を握る上司の顔色を見て、行動するほうが収入に影響するからだ。こうした構造は、顧客軽視の遠因となり得るもので、最終的には顧客より組織を優先した不祥事の根本がここにあると個人的には思っている。ちなみに、フリーランスという働き方が浸透し、開業率も高い米国では、状況がかなり異なるらしい。

 こんなことを考えていると、これから若年人口の減少で労働力不足が課題になるというのは悪いことばかりではない気がしてきた。労働者の立場が強くなり、雇用環境がより改善される方向に進めば、労働市場も今より流動化することになるだろう。副業解禁も少しずつ広がっていけば、外の世界との接点が会社への依存を薄めてくれる。これまで以上に転職、副業が当たり前になり、キャリアの選択肢が増えていくなら、組織に依存していたサラリーマンの視野は広がり、それが組織の自浄力につながるという場面も増えてくるはずだ。

 就活中の甥っこは、売り手市場を背景に超大企業から内定をもらったらしいが、その会社に一生いる気は毛頭なさそうだ。こうした価値観を持つ若者の時代になってくれば、きっとこれまでのようなサラリーマンのマインドも変わってくるに違いない。われわれおじさん世代も、本当の収入の源泉が誰なのか、改めて考えて行動するようにしたいものだ。

著者プロフィール

中井彰人(なかい あきひと)

メガバンク調査部門の流通アナリストとして12年、現在は中小企業診断士として独立。地域流通「愛」を貫き、全国各地への出張の日々を経て、モータリゼーションと業態盛衰の関連性に注目した独自の流通理論に到達。


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