ビジネスマン僧侶が挑む お寺が「コンシェルジュ」になろうとする理由築地本願寺が立ち向かう“寺離れ”(3/5 ページ)

» 2018年06月27日 07時30分 公開
[加納由希絵ITmedia]

「本当にお寺に必要なのか?」と問われた

 たくさんの人と新しい“絆”を築いていくためのアイデアは次々と浮かんだ。しかし、それを形にするのは決して簡単ではなかったという。「大変でした。取りあえず実績を出さなければ、次に取り掛かれない。そんなもどかしさもありました」と振り返る。

 大きな壁になったのが、初めての取り組みに対する理解がなかなか得られないことだ。「企業が手掛ける事業であればすんなりできることでも、寺では何もかも初めて。考え方やノウハウが組織にビルトインされていないのです」

 プロジェクトを進める中でよく投げかけられたのが「それは、本当にお寺に必要なのか?」という問い。お金をかけて新しいことをして、それが伝道布教につながるのか。心配するのは当然かもしれない。

 しかし、安永さんはこう言い切る。「誰もが環境の変化を感じていますが、それを正面から見つめたくないだけなんです。現状を認識するのは確かにつらい。ですが、見つめざるを得ない。新しいことにはリスクもありますが、何もしないとただ衰退していくのを待つことになるのです」

 寺の力は確実に弱くなっている。80年前のように、境内が人で埋め尽くされることはもうないかもしれない。「あのころのイメージを持ち続けていると、衰退していきます」。それならば、いま求められていることをやるしかない。安永さんの主張はシンプルだ。

 「現代のライフスタイルに何が求められているか」を徹底的に考えた安永さんが最初に起こした行動は、「寺から出ていくこと」。築地本願寺の名前は知っているが、入ったことはない。なんとなくハードルが高い。怖い。そう感じている人が多いことから、イベントなどで寺に呼び込むことは難しくなっている。「それならばこちらから外にいる人々のところへ出ていこう」。そう考えたのだ。

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