貿易摩擦で経済リスク、政府内に消費増税慎重論が浮上マインドに悪影響も(1/2 ページ)

» 2018年06月27日 12時34分 公開
[ロイター]
photo 6月26日、米中や米欧間で生じつつある貿易摩擦が、日本の財政運営判断に大きな影響を与えそうな雲行きになってきた。写真は都内で2016年9月撮影(2018年 ロイター/Toru Hanai)

[東京 26日 ロイター] - 米中や米欧間で生じつつある貿易摩擦が、日本の財政運営判断に大きな影響を与えそうな雲行きになってきた。貿易摩擦で中国経済に減速リスクが高まれば、日本経済に悪影響を及ぼしかねないとの声が浮上してきた。先に公表した「骨太方針」には来年10月に消費税率を10%に引き上げると明記したが、政府の一部からは貿易摩擦と消費税引き上げが重なる事態は、避けたいとの声が出てきた。

<既にマインドに影響>

「首相は今のところ、来年の増税を実施するつもりでいるようだが、貿易摩擦と消費税引き上げで、日本経済は果たしてもつのか」──。

安倍晋三首相に近い政府関係者は、最近のトランプ米大統領の言動を見ながら懸念を強めている。別の政府高官も「貿易摩擦が激しくなると、消費税引き上げを控えている日本として、困ったことになる」と語る。

日本経済が昨年10─12月期まで8四半期連続でプラス成長となった原動力は、世界経済の拡大による輸出の増加だった。最近は中国経済の回復による寄与が目立っていた。17年以降、急激に生産が拡大している一般機械は、中国におけるIoT(モノのインターネット)拡大に伴う半導体や半導体製造装置の輸出の寄与が大きい。

しかし、6月ロイター短観では、輸出型製造業の景況感が悪化した。貿易摩擦への懸念が背景にあり、製造業全体でも景況感が年初から低下。加えて消費者心理に関連した各種の指標も悪化している。

ある経済官庁の幹部は「景気が腰折れするとはみていないが、従来のようにどんどん良くなっていく感じはない」と話す。「ようやく設備投資に勢いが出てきたところだが、貿易摩擦に伴い企業マインドが悪化して、設備投資に様子見姿勢が出てくることが心配だ」と不安を隠さない。

<中国経済6.5%成長割れも>

現在のところ、米国による日本への具体的な輸入制限措置は、鉄鋼・アルミ製品に対する高関税にとどまっている。

だが、冒頭の政府関係者は「むしろ影響が大きいのは、米中摩擦による波及だ。米国の中国製品に対する制裁関税の実施などへの警戒心はとても強い」と不安を隠さない。

トランプ大統領は、中国に対する500億ドルの制裁関税に加えて、その4倍の2000億ドルの追加関税も発表。中国も同額の報復措置を打ち出し、質と量で対抗する方針を示している。

SMBC日興証券・シニアエコノミスト、肖敏捷氏は「このままでは中国が6.5%という成長率目標を達成できなくなる可能性を排除できない。17年に実質成長率が6.9%と政府目標の6.5%を大幅に上回った背景には、純輸出の寄与度改善がある。言い換えれば、純輸出の寄与がなければ、固定資本形成と最終消費だけでは目標の達成が不可能だった」と分析。貿易摩擦で輸出が伸び悩めば、成長率低下は不可避とみている。

米国との貿易摩擦は、対欧州でも拡大している。欧州連合(EU)は22日、米国による鉄鋼・アルミニウムの輸入制限への対抗措置として、総額28億ユーロ規模の米製品に最大25%の追加関税を課す報復措置を発動した。

トランプ大統領も、EUから米国に輸出されるすべての自動車に20%の関税をかけるとツイッターに投稿し、再報復に出る構えを表明している。

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