――若い世代であれば楽しく取り組めそうですが、褒めることが苦手な人は上司の立場にある世代に多いと思います。これを使って褒める習慣をつくるのは、難しいのではないでしょうか?
もちろん、褒めるツールを導入するだけでは何も変わりません。大手自動車メーカーのカスタマイズ用品を製造する、あるメーカーがホメログを導入したのですが、当初はなかなか浸透しませんでした。
その会社は職人気質の中年男性が多い現場でした。「若いころに叱られて育った職人たちに、今の若い人が付いてこない」ことが大きな課題になっていました。日本人は褒めるのが苦手ですが、若い人たちは褒められて成長したい。ミスマッチが起きていました。
ただ、職人たちも「褒めたくない」わけではなく、「褒め方が分からない」だけ。良いところを見つけるトレーニングをすれば、習慣にすることはできます。人は、意識を集中させないと、見つけたいものを探し出すことはできません。お互いに価値を発見するグループワークなどを重ねた結果、「おっちゃんでも褒められるとうれしい」という気付きを得られたようです。ある世代に限らず、チームで取り組む仕事には合う仕組みだと考えています。
――ここまでたくさんの企業に広がった理由は何でしょうか。
労働人口がどんどん減っていく中で、人材を定着させることが企業の課題です。しかし、一方で若い人の離職率は高くなっています。
離職が多い理由の一つに、「仕事に意義を感じたい」人が増えたことがあるのではないでしょうか。褒める仕組みがあれば、自分がやっている仕事について、ちょっとしたことでもすぐにフィードバックが得られます。また、若い世代は職場の人間関係を重視する傾向も強く、褒め合う仕組みには安心感があります。
RECOGは、宮崎県日南市役所にも導入されました。行政機関には初の導入です。地方公務員の長期休職者は約10万人おり、そのうち4万人以上がうつ病と診断されているそうです。そのような社会問題の解決に向けた一手として、行政にも「褒め合い」が広がっていくと考えています。
これまで蓄積したデータを人工知能(AI)で分析して、個人の特性やチームの状態を細かく把握できるようになってきました。それをリクルーティングサービスなどに活用できればと考えています。私自身、採用活動の際に「どんなことで称賛される人なのか」「他の人とどの程度つながろうとする人なのか」を知りたいと感じることが多いです。他の企業とも連携しながら、称賛を通してビジネスパーソンの行動特性や価値観を見える化するツールにしていきたいと考えています。
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