「お父さんバンク」ってなに? 1日限定のパパが注目されている土曜インタビュー劇場(得意ワザ公演)(2/5 ページ)

» 2018年07月07日 09時00分 公開
[土肥義則ITmedia]

コンセプトは「1人よりもふたり、2人よりもたくさん」

土肥: 得意ワザを持て余している人と、それを必要としている人をマッチングさせる「お父さんバンク」が広がっているそうですね。2017年9月にスタートしたところ、全国から問い合わせがきているとか。「オレも登録したい」「ワタシもサービスを受けたい」といった声だけでなく、「○○県でも運営したい」といった話もあるとか。

 このサービスの最大の特徴は、利用するにあたって料金は発生しなくて、ただのプラットフォームであること。世の中には子育て支援サービスはたくさんあるのに、なぜこのような場を設けたのでしょうか?

義廣: 私はシングルマザーでして、1人で子育てをしているんですよね。江の島にカフェを開いて、そこで仕事だけでなく、家事も子育てもしている。カフェに来られているお客さんと話をしていると、さまざまな得意ワザを持っていることが分かってきました。親子ゲンカをしたときには、子育ての経験があるAさんに相談してみよう、体調がよくないときには、健康問題に詳しいBさんに相談してみようといった感じで、いろいろ助けてもらっていました。

 こうした生活を送っていると、自分はシングルマザーだけれど、シングルマザーでないような感覚になったんですよね。「こうした関係っていいよなあ。これを仕組みにすることはできないか?」と考え、ある人に相談したところ「それやってみようよ」となりました。その後、「オレはWebサイトをつくることができる」「ワタシは仲間を集めることができる」といった感じで輪が広がっていき、「1人よりもふたり、2人よりもたくさん」というコンセプトを掲げて、プラットフォームをスタートすることができました。

「年賀状の写真を子どもと撮りたい」というお母さんの願いをかなえるために、早朝5時から登山に同行する「お父さんバンク」のお父さん

土肥: 既存の子育て支援サービスは有料のところが多いですが、なぜお父さんバンクは無料にしたのでしょうか?

義廣: 既存のサービスって便利ですよね。お金を支払えば、そのぶんのサービスを受けることができる。お金を払えばサービスを受けることはできるのですが、そうした関係がある以上、その枠を超えたところで仲良くなることは難しいのではないか。

 その昔、日本では“地域で子どもを育てる”といった文化がありましたよね。子どもが悪いことをすれば近所の大人が叱ったり、隣の家の人が子どもの面倒を見てくれたり。核家族化が進んだことで、いまはそうした関係を築くことは難しくなりましたが、昔の形に近いことはできるのではないか。お金を払って受けられるサービスは山ほどあるので、じゃあ自分たちはお金を払わずに支援を受けられる場を提供しようと考えました。

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