衛星の利活用に挑むベンチャー企業も存在する。Myriotaは15年に南オーストラリア大学からスピンオフしたベンチャー企業であり、超小型衛星を活用したIoT(モノのインターネット)向けの大規模かつ低価格な衛星通信ネットワークの構築を目指している。
25年までに270億個のデバイスがつながると言われる世界のIoT市場だが、同社では軌道上の衛星と双方向通信を可能とする、省電力かつ超小型な送信デバイスと通信技術を開発した。将来的には、物流、防衛、農業、海洋、風力発電などIoT化が期待されるさまざまな分野での活用を目指しているという。
今年3月には米航空宇宙大手Boeingの投資部門も参画して、シリーズAとして1500万ドルの資金調達に成功した。Boeingの投資部門としては米国外で初めての案件であったために注目も集めた。先述のようにオーストラリアでは衛星利活用が進められており、このような地上設備や機器のテクノロジーベンチャーが存在するのも同国の特徴と言える。
衛星ベンチャーも存在する。Sky and Space Globalは15年に創業した超小型衛星を活用した衛星通信企業だ。英国に主要拠点を構えつつ、親会社がオーストラリアの証券取引所に上場をしている。同社では将来的に200機の超小型衛星から構成されるコンステレーションの構築を目指している。
同社の衛星群が目指すのはIoT、M2M(Machine to Machine)、音声、メッセージなどの伝送に使うためのナローバンドの衛星通信サービスだ。同社では地上の通信インフラが十分に整わない国や地域においては、こうした通信サービスが唯一の手段であり、人々の生活向上の大きく寄与すると考えている。
17年6月には「3 Diamonds」と呼ばれる3Uサイズ(1Uは縦10センチx横10センチ)の 実証用衛星を3機打ち上げており、9月には同衛星を活用して通話、インスタントメッセージ、音声記録等の伝送に成功した。今後は2019年の第1四半期に20機の衛星を打ち上げることを目指している。
このように、活発な動きがあるオーストラリアの宇宙産業には世界の関心も高い。月に人類の恒久的拠点を築くことを目指しているジェフ・ベゾス氏と米Blue Originは同プロジェクトに関してオーストラリア政府と話す準備ができていると公に語っている。今後オーストラリアの宇宙産業がどのように発展・拡大していくのか注目していきたい。
石田 真康(MASAYASU ISHIDA)
A.T. カーニー株式会社 プリンシパル
ハイテク・IT業界、自動車業界などを中心に、15年のコンサルティング経験。東京大学工学部卒。内閣府 宇宙政策委員会 宇宙民生利用部会 委員。日本初の民間宇宙ビジネスカンファレンスを主催する一般社団法人SPACETIDE共同創業者 兼 代表理事。日本発の民間月面無人探査を目指すチーム「HAKUTO(ハクト)」のプロボノメンバー。著書に「宇宙ビジネス入門 Newspace革命の全貌」(日経BP社)。
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