W杯取材記者が見た、ロシア「最高の素顔」見たこともないくらい清潔な都市(2/3 ページ)

» 2018年07月10日 06時00分 公開
[ロイター]

<「ロシアについての先入観は忘れよう」>

ロシア代表が別の都市で試合を行っているときは、地元市民は街に繰り出し、歌を歌い、ファンゾーンに詰めかけた。2014年のブラジル大会や、2010年の南アフリカ大会で筆者が目にした光景よりも、さらに熱狂的な愛国心が現れていた。

懸念されていたイングランドのフーリガンも杞憂に終わった。

むしろイングランドファンは、カフェや大通りで応援旗を掲げ、ロシア人と一緒に行儀よくパーティに興じていた。警察官は控えめに路地で待機し、訓練で想定していたトラブル解消のために駆り出されることはなかった。

胃にもたれ、味気ないとばかにされることもある食べ物も、好評を博していた。特に、どこにでもあるカツレツやスモーキーな香りのアメリカンコーヒー、驚くほど安価なシベリア産キャビアはよかった。

「ロシアについてこれまで読んできた、あるいは思っていたことはすべて忘れよう。非常に素晴らしい国だ。ロシアに来るのを避けた人が多いのは非常に残念だ」──。イングランドファンのチャーリー・カーラインさん(33)は、2本の大河を見下ろす丘の上、ニジニ・ノブゴロドの「クレムリン」城の脇に設けられた陽光溢れるファンゾーンでビールをあおりながら、そう語った。

カーラインさんの友人たちは、過去のW杯にも足を運んでいたが、今回は国に残ることにしたという。2016年欧州選手権の際にフランスで起きたようなロシアとイングランドのファンによる暴力的な衝突や、両国の政治的な関係悪化に伴う敵意を懸念したためだ。

ロサンゼルスを拠点とするロイターカメラマン、ルーシー・ニコルソンは、オリンピックを7大会取材しているが、W杯は今回が初めてだ。ようやくのことでリオネル・メッシとクリスティアノ・ロナルドを目にすることができて興奮していた。

「オリンピックと比べて、W杯で最も驚いたことの1つは、男性ばかりだということ。ファン、メディア、そしてもちろん選手も含めて、圧倒的多数が男性だ」と彼女は言う。

「それを考えると、暴力沙汰をほとんど目にすることがなかったというのは驚きだった。普通のロシア人、特に女性は例外なく親切で暖かかった。こうした歓迎の態度は、国家的なイベントに対するプライドや、あるいはおだやかな天候に刺激されたものかもしれないが、その大半は自発的で純粋なものに見えた」

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