文科省の局長逮捕は「天下りシステム」崩壊の副作用ではないかスピン経済の歩き方(2/6 ページ)

» 2018年07月10日 08時08分 公開
[窪田順生ITmedia]

天下り禁止と不正行為の因果関係

 ご存じのように、2017年1月、内閣府再就職等監視委員会の調査で、文科省は組織ぐるみの天下りをあっせんしていたことが明らかになった。前局長が東京医科大学関係者から、私大支援事業の対象校に選定するよう依頼を受けたとされるのは、その4カ月後のことである。

 状況的には「天下りシステム」が崩壊したことが、「汚職」の引き金になった可能性が否めないのだ。無理にこじつけているわけではない。両者に因果関係があるのは、以下の3つのポイントからも明らかである。

(1)2008年まで文科官僚の汚職は珍しくなかった

(2)文科省の組織的な天下りは2009年から始まっている

(3)「天下りシステム」機能中は大きな汚職は発覚していない

 まず、(1)から説明しよう。今回の局長逮捕といい、財務省の文書改ざん問題といい、この手の話がでるたびにマスコミは「前代未聞!」「なぜ? 霞が関に衝撃!」みたいに、さもこれまでこういう不祥事は起きなかったかのように大騒ぎをするが、実は歴史を振り返れば、いま問題になっている不正や不祥事というのは、定期的に発生している。

 今回、局長がやったとされることも同様で、文科省という組織においてそこまで「前代未聞」ではなく、むしろ「伝統」と言っても差し支えないようなものなのだ。

 2008年、文科省の文教施設企画部長が、国立大の施設整備の情報を大手ゼネコン五洋建設の子会社顧問に流して、現金を受け取って収賄で逮捕された。ほかにも7人の現職幹部が関わっていた。

 この8年前の1994年、文部省時代には高等教育局大学課の係長が、椙山女学園大学(名古屋市)の学科新設にまつわる審査に便宜をはかって現金や50万相当の家族旅行をプレゼントされ逮捕された。そしてこの6年前の1988年にはいわゆるリクルート事件で、文部事務次官が収賄で逮捕されている。もっとさかのぼれば、医学部の裏口入学をあっせんするグループに、文部省の係長が関わっていたことが発覚したこともあったし、前局長の出身である科学技術庁でも収賄事件はちょいちょい発生している。

 つまり、「息子の点数に下駄を履かせる」という手口が斬新なだけで、局長が行ったことは、6〜8年に1回くらいのペースで定期的に発覚する、極めてトラディショナルな「官僚犯罪」なのだ。

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