なぜカシオの「余り計算機」は、いまの時代でも売れているのかあの会社のこの商品(2/5 ページ)

» 2018年07月12日 07時38分 公開
[大澤裕司ITmedia]

「商品化してもいいのではないか」という結論に

 関数電卓を使えば、余りは計算できる。だが、余り計算のためだけに使うには、高性能すぎる上に高価だった。

 ところが、同様の問い合わせは物流会社のみならず、調剤薬局からも来ていた。むしろ、物流会社よりも多く問い合わせがあったほど。このようなことから、国内は調剤薬局と物流会社、海外は物流会社を対象に、需要を確かめる調査を行うことにした。物流会社の調査では、最初に問い合わせてきた会社のヒアリングも試みた。

 まず調剤薬局を調べたところ、錠剤や粉薬の処方で単位外の端数や服用成分の量を計算する際に電卓を使っていることが分かった。

 物流会社の場合は当初、一般的な物流会社では最新のWMS(Warehouse Management System:倉庫管理システム)を導入しているケースが多いことから、電卓を使う必要性は低いと考えていた。しかし倉庫の作業者に聞くと、電卓を「使う」ということだった。

 詳しく話を聞くと、調達物流(生産に必要な資材や原材料、部品を生産現場に運ぶ活動)と販売物流(商品を顧客まで届ける活動)の2つは、倉庫の作業者が現場で手計算を強いられることがあることが分かった。特に納品先が在庫を持たないようにしている場合は、ジャストインタイム(必要なモノを、必要なときに、必要な量だけ届ける)で対応しなければならず、扱い品目によってはピッタリ何箱とはいかずに端数が出る。そのような場合は、箱から何個ピッキングすればいいかを現場で計算して求めなければならないのだ。

 調剤薬局と物流会社を調査し、以上のような電卓の利用シーンが確認できた同社は「商品化してもいいのではないか」という結論に至った。特にコンビニよりも多いといわれる調剤薬局での使われ方が確認できたことから、ある程度は需要が見込めると判断した。

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