なぜカシオの「余り計算機」は、いまの時代でも売れているのかあの会社のこの商品(4/5 ページ)

» 2018年07月12日 07時38分 公開
[大澤裕司ITmedia]

乗り気ではなかった営業部門との調整

 ソフトは一から開発したものの、数カ月で完成した。また、調剤薬局や倉庫では日数や時間の計算もできると便利ではないか? という仮説から、日数計算機能や時間計算機能も持たせ、そのための[日数/時間]キーも搭載した。

 時間を要したのは営業部門との調整であった。販売に否定的な意見もあったからだ。「販売規模が限定的で小さくなる、という意見でした」と塙氏は振り返る。

 ただ、営業部門は販売に乗り気ではなくても、会社としては開発・販売する意味はあった。同社は言わずと知れた、電卓のリーディングカンパニー。電卓で困っている人がいれば、困り事が解決できる電卓を届けたい、という思いがある。そのため、営業部門と流通からの聞き取り調査も行い、最終的に発売にこぎ着けた。

「余り計算電卓 MP-12R」の開発に関わったカシオ計算機の塙英雄氏

 発売が決まったとはいえユーザーは限られる。そのため余り計算電卓の生産計画は当初、慎重に見ていた。

 ところが発売してみると、同社の計画をはるかに上回る売れ行きとなり、発売からすぐに欠品を起こしてしまった。話題が拡散したこともさることながら、「家電量販店など小売店での取り扱いがある程度進んだことも欠品を起こしてしまった理由の1つ」(塙氏)。現在は生産計画を見直すなどして欠品は解消されたが、販売再開後の売れ行きも堅調で、日本国内の年間販売見込み数は、すでに突破した。今後も、多くの調剤薬局や物流会社の目にとまるよう、働きかけていく考えだ。

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