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「同僚からのボーナス」があると、職場はどう変わるのかメルカリにも浸透(3/4 ページ)

» 2018年07月12日 07時00分 公開
[加納由希絵ITmedia]

「大・分からない時代」の日本企業

 Uniposの前身は、「発見大賞」と書かれた段ボール箱だったという。4年半ほど前に社内で使うためにつくった仕組みだった。

 「会社が大きくなってくると、組織が見えづらくなってきます。私自身、役員としか話さない日が続いていました」と田中社長は振り返る。発見大賞は、社員の仕事ぶりや考えていることを“見える化”するための箱。自分が発見した他の人の良いところを箱の中に入れてもらう。そして、良いところを“発見された人”を発表していた。営業成績などの数字では表れない「良い仕事」を褒めるための仕組みだ。

photo 「発見大賞」を始めたころに使っていた段ボール箱

 「発見大賞を始めて、社員の満足度が上がった」ことから、同じように悩んでいる他の経営者にもそれを伝えた。すると、「取り入れたい」という声が多かったという。「会社の成長には、(従業員数)30人、50人、100人の“壁”があると言われますが、お互いに何を考えているか分からない、会社の方向性を共有できていない、ということが、壁にぶつかる原因だと思います」(田中社長)。悩む企業の多さを感じたことで、発見大賞をシステム化し、商品化に至った。

 「今、日本の企業は『大・分からない時代』です」と田中社長は強調する。会社の中にはさまざまな職種や複数の拠点があって、ただでさえお互いの仕事を理解するのは大変なのに、今は時短勤務やリモートワークなども一般的になり、“分からなさ”が増している。そんな時代だからこそ、日々の仕事を評価し合う仕組みが機能する。

 導入企業の規模や業種の幅は広がっている。「当初はIT系企業が多かったのですが、ホテルや病院、美容サロンなども増えています。例えばホテルなら、フロント、客室、調理場など、それぞれの持ち場以外の人の仕事はほとんど見えません。しかし、お互いに評価する様子を他の人も知ることで、つながりを感じることができます」(田中社長)。本社以外にコールセンターを設置している企業や、全国各地に拠点がある企業などにも合う仕組みだという。

photo 職種が違っても業務上の関わりはある。そんな人に感謝を伝えることもできる

 メルカリでも、社員同士のつながりを感じられるツールとして機能している。「疲れたときや休憩中にアプリの画面を眺める、という使い方をしている社員もいます。それだけで元気が出たり、意外なつながりを発見したりするきっかけになっているのです」とメルカリの山下さんは話す。また、人事評価の際に参考にすると、社員の人物像や仕事ぶりをより多面的に把握するのに役立つという。

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