――なぜコンディショニング事業に着目したのか。
木村氏: 日本は少子高齢化が進んでいるが、それに伴ってウェルネス関連の市場規模も大きくなっているためだ。
日本では健康状態に問題を抱えている高齢者が増え、社会保障費が増加している。だが、社会保障制度の維持に貢献している若者も少子化で減っている。当社は高齢者の健康状態を改善するビジネスを展開することで、この課題を解決したい。
高齢者が健康を害する大きな理由に、家族や友人と疎遠になって人と話す機会が減り、活力が低下することが挙げられる。
ミクシィがあえてこの分野に参入する目的はここにもある。当社がこれまで一環して重視してきたのは「コミュニケーション」。高齢者が会話を楽しみながら健康を維持できるサービスを提供し、他者との交流が断絶する人を減らしていきたい。
――トレーニング関連のビジネスでは、RIZAP(ライザップ)グループが成長を続けている。RIZAPと競合するつもりなのか。
木村氏: コミュニケーションを生み出すために、指導はパーソナルレッスンではなく、集団レッスンにするつもりだ。パーソナルレッスンの場合、コミュニケーションの対象は講師のみで、ジムを出ると孤独になってしまう。これを防ぐため、友人などと対話しながら受けられるものにしたい。
強い“コミットメント”を求めるつもりもない。とにかく健康寿命を延ばすことにフォーカスしていく。今後、どんな施策が顧客に一番楽しんでもらえるかを探っていきたい。
――どんなメニューを提供する予定なのか。
木村氏: メニューは現在、京都大学と共同開発を進めている段階。学術的な知見に基づき、正しいコンディショニングを提供したい。食生活やトレーニングを指導できるトレーナーの雇用も進めたい。
――木村社長はスポーツ領域担当の執行役員を兼任している。スポーツ事業は今後どう進める予定なのか。ヘルスケア事業とはどう異なるのか。
木村氏: 詳細はまだ公表できないが、スポーツ事業では顧客本人が体を動かすのではなく、観戦体験をより豊かにするものを考えている。
木村氏: 具体的には、スポーツにショーの要素を取り入れ、演出をもっと楽しくする案を構想中だ。ハーフタイムのコンサートや、スタジアムで提供される料理なども充実させ、エンターテインメントとしてのスポーツ観戦を盛り上げたい。
――スポーツ観戦に着目した理由は。
木村氏: 日本のスポーツ界は、ファンが交流する場が海外よりも少ないと考えている。海外のサッカースタジアムや野球場を視察したが、多くのファンが試合前から集合して盛り上がり、終わった後も遅くまでスポーツ談義に花を咲かせていた。バーやラウンジも充実しており、家族でワイワイする人たちも多かった。
一方、日本では、スポーツファンが細分化していると感じる。ニッチな知識を持つ人たち同士で盛り上がり、ライトなファンは「にわか」と批判される。試合の前後に楽しめる仕掛けや雰囲気づくりもまだまだ足りない。
ヘルスケア事業と共通しているのは、こうした状況をコミュニケーションの力で変えたいということだ。
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