インタビュー
» 2018年07月18日 07時00分 公開

サイボウズ式:聖光学院に聞く、教員の働き方改革――「難しく考えず、できることから始めて続ける」 (1/5)

[サイボウズ式]
サイボウズ式

 「中学教師の約6割が過労死ラインを超えて働いている(※)」「ボランティア扱いの部活動顧問や時間を取られる書類仕事に追われ、長時間労働が常態化している」 そんなブラックなイメージが蔓延する教師の働き方に真っ向から立ち向かう学校が、中高一貫校の聖光学院中学校高等学校です。

 東京大学をはじめ難関高校への進学実績を飛躍的に伸ばしつつ、全館Wi-Fi整備、情報共有の効率化、定時の16時20分に退勤できるタイムスケジューリングなどを実践し、教師の働く環境向上にも取り組まれています。

 今回はその立役者である工藤誠一校長にインタビューを実施。サイボウズ式編集部の椋田亜砂美が、同校がなぜ「働き方改革」を実施できるのかを聞きました。

※小中学校の教員を対象とした平成28年度の勤務実態調査結果(文科省・速報値)

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時代に逆行する画一的な教育は、子どもたちを丸腰で戦場に送り出すようなもの

工藤校長:  教師という職業は、昔はもっと自由だったんですよ。給料はそれほど高くなくても、残業は月10時間もなかったし、春夏冬には長期休暇もあった。

 私立だけでなく、都立高校でも教師の副業はOKでした。予備校と掛け持ちしながら働く優秀な先生たちがたくさんいましたよ。

椋田: いつごろから変化したのでしょうか。

工藤校長: 少しずつですね。公立校の教員が夏休みの平日に自宅で洗車していたら、「公務員が平日に休んでけしからん」とクレームが入るようになってしまったように「監視の目」が年々厳しくなっているようです。

photo 工藤誠一/学校法人聖マリア学園 理事長/聖光学院中学校高等学校 校長。1955年横浜市生まれ。明治大学大学院政治経済学研究科博士前期課程単位取得修了。母校である聖光学院社会科教諭、同校教頭などを経て、2004年より校長。2011年より理事長を兼務。神奈川県立私立中学高等学校協会理事長も務める。

椋田: 多くの学校が、長時間労働となる「ブラックな職場」から脱却できない原因は何だと思いますか?

工藤校長: 一番の要因は、「変化への恐怖」ではないでしょうか。昭和の製造業モデルの成功体験があまりにも大きかったですから。これまでは、画一的で同じ品質を保つ商品を製造できる人材が理想とされました。

 教科書に書いてあることが正解で、それ以外は正しくない。機械的に命令を聞く軍隊のような教育が、いまだにまかり通っています。

椋田: かつての成功体験にとらわれ変化できないのは、民間企業でもまったく同じですね。

工藤校長: 教師の働き方改革で必ず話題に上がる部活動のシステムも、かつての日本社会のシステムと非常にマッチしていたんですよ。

 部活は「入部したら辞めない」「理不尽なことにも耐える」「がむしゃらに頑張る」ことを良しとしているでしょう。

工藤校長: しかも、ほとんどの顧問の教師はそのスポーツの専門家ではないため、おのずと練習は根性論に偏ってしまいがちです。

 すし屋や蕎麦屋でも、就職して数年修行したらのれん分けという時代には、理不尽に耐え、簡単に辞めず、がむしゃらに働く人材を育てる教育がよかったわけです。しかし、いまはもうそんな時代ではありません。

 一生懸命取り組むことは、決して悪いことではないけれども、子どもたちの思考能力を奪うような教育は、完全に時代に逆行しています。

椋田: 時代が必要とする教育とは真逆の教育がいつまでも行われている、と。

工藤校長: その通りです。ここ数年、私が生徒から聞いた言葉で最も印象に残っているのが「これからの時代は、抽象的思考能力がなければ稼げない」です。言われたことをひたすらこなすような働き方では、もはや稼げないと、生徒たちはちゃんと気がついている。

椋田: それは頼もしいですね。

工藤校長: 日本はかつて莫大な金額を投資して、地方の隅々まで電柱や電線を巡らせ電気を通してきました。それが現在ではアマゾンの奥地のような場所でも、太陽電池とアンテナに格安の携帯電話やパソコンがあれば、どんな最新情報にもアクセスができる。

 国力の差が一気に縮まりうる時代に、画一的な人材を育てていては、あっという間に日本の国力が衰退してしまいます。

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