イオンもライバル視 知る人ぞ知る快進撃のゆめタウン小売・流通アナリストの視点(3/3 ページ)

» 2018年07月19日 06時30分 公開
[中井彰人ITmedia]
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 ただ、この街でもクルマがなければ、利便性の享受は難しい。周辺住民は、今はファミリー層が中心なので困ることはないが、いつかは高齢化して大都市のニュータウンのようになる時が来る。この街の成功事例も、クルマ社会の高齢化問題の解を示してはくれない。この地域の公共交通を調べてみたが、たまたま複数の自治体の境界域にあるため、各々の自治体単位でルートが組まれていて、地域一体をうまく循環する公共交通が構築できていない。新しくできた街の構造と自治体の線引きがうまくマッチしないのである。菊陽町は周辺自治体よりも豊かな財源を持っているため、市町村合併の際に周辺とのバランスがとれず、統合がうまくいかなかったらしい。

 地方自治体の線引きは、地域住民の生活や経済活動とは無関係に決められている。行政施策や事業は基本、自治体単位に実施されるため、いわゆる都市圏単位で見ると複数の自治体がエリア内で似たような施策や事業を行っている。地方でも車で30分走れば、いくつもの自治体の境界を越えていることは少なくない。

 多分これこそが無駄であり、非効率なのだろうと思う。こんなに細かい自治体単位に事業、施策が分散していれば、財源のみならず、人材不足になるに決まっている。やる気のある公務員や団体職員が少なくないことは知っているが、彼らも細分化された自治体を超えて動く権限を与えられていない。都市圏単位での効率的な自治体再編をもう一度考える必要性を感じる。

著者プロフィール

中井彰人(なかい あきひと)

メガバンク調査部門の流通アナリストとして12年、現在は中小企業診断士として独立。地域流通「愛」を貫き、全国各地への出張の日々を経て、モータリゼーションと業態盛衰の関連性に注目した独自の流通理論に到達。


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